『ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー』のエイチームが、2022年7月期のゲーム事業で8億9,400万円の営業損失を計上しました。
ゲーム事業で赤字を出したのは2012年4月の上場以来初。2021年11月にリリースした『ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー』は、ゲーム事業の売上減を食い止める救世主と見られていましたが、ユーザーの期待に応えられず早くも2023年1月にサービス終了が決定しました。
エイチームは研究開発費が競合他社と比較して低すぎることや、身内に甘い組織体制が続いていることなど、構造的な問題を抱えている可能性があります。
多発する不具合と操作性の悪さは慢心が原因か?
エイチームは2014年12月に配信した『ユニゾンリーグ』や2016年6月の『ヴァルキリーコネクト』のヒットタイトルで知られる会社。しかし、近年はヒット作に恵まれずに業績は伸び悩んでいました。
■エイチームゲーム事業業績推移
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※決算短信より筆者作成
特に2020年7月期に売上高が100億円を下回ってからの停滞感が顕著。2022年7月期は売上高が前期比13.1%減の63億1,600万円となり、9億円近い赤字を出しました。
エイチームは2018年10月に『少女☆歌劇 レヴュースタァライト -Re LIVE-』、2020年6月に『初音ミク -TAP WONDER-』をリリースしました。しかし、ヒットには結びつきませんでした。
ユーザーや投資家の期待感を煽ったタイトルが、スクウェア・エニックスとの共同開発である『ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー』でした。エイチームは、リリース前の2021年6月1日から8日にかけてクローズドβテストに参加したユーザーにアンケートを実施。「アプリの評価を率直にお答え下さい」との質問で、とても満足が37%、満足が39%との回答が得られました。76%が満足したという上々な結果を得られたのです。
前評判は良く、リリース前の2021年11月9日には事前登録者数が100万件を突破。リリース直後の11月16日には200万を達成したと発表しました。
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※「スマートデバイス向けバトルロイヤルアクションゲーム『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER』、事前登録200万達成!」より
しかし、リリース直後にアクセスが集中したことでサーバーに過度な負荷がかかり、緊急メンテナンスでゲームをプレイできない状態となりました。安定的に稼働するようになっても、「ボイスチャットが使用できない」「コントローラー操作時にカーソルが消えてしまう」「アプリが途中で落ちてしまう」など数々の不具合に見舞われます。
期待が高いタイトルだっただけに失望するファンも多く、ユーザーが離れてしまいました。
『ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー』は特にボタンの数が多く、操作が難しいという声を多く聞きます。リリース前のクローズドβテストの代表的な意見の中にも「操作の仕方がわかりにくい」という声がありました。
事前にユーザーの声を拾っていたにも関わらず、エイチームはそれを開発に活かせなかった可能性があります。
2021年9月10日の2021年7月期通期決算説明会の中で、取締役エンターテインメント事業本部長の中内之公氏は、クローズドβテスト以降、特にテストはしていないと明言しています。
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2021年7月期第3四半期の決算説明会においては、スクウェア・エニックスと協業できた経緯を教えてほしいとの質問に対して、林高生代表取締役社長は「非常に難易度の高い開発を求められるタイトルだったため、先方も本当に我々にできるのかということを、事前に技術力チェックなどで確認していた。段階を経るごとに、我々の技術力の高さをより信頼していただけたという流れだと思っている」と回答しました。
一連の役員からの発言と、ゲームがリリースされた後に発生したプレイ障害、不具合、操作性に対する悪評を鑑みると、経営陣がエイチームの開発力や技術力を過大に評価し、慢心していた様子が浮かび上がります。