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VTuberプロダクション「ホロライブ」を運営するカバーの収益性が高まっています。
10月29日、同社は2025年3月期第2四半期累計期間(2024年4月1日~2024年9月30日)の業績予想の上方修正を発表。好調の背景には9月20日に発売したトレーディングカードゲームのヒットがあります。そして11月12日に公表した決算にて、戦略的に進めていた物販の売上比率が大幅に上がっていることが明らかになりました。
カバーは決算発表後に株高が進行しましたが、これは通期業績予想を上回って着地するという期待感に裏打ちされたものでしょう。ただし、同じVTuber事業を展開するANYCOLORに大きな差をつけているのは、カバーの戦略性と実行力の高さ、およびそれが成果に結びついていることへの評価があるのではないでしょうか。
カバーとANYCOLORで株価に明暗が
カバーの2024年3月期第2四半期累計の売上高は前年同期間比39.3%増の171億400万円、営業利益は同46.3%増の33億7,200万円でした。期初に上半期の売上高を前年同期間比17.5%増の144億2,600万円、営業利益を同4.2%増の24億100万円と予想していましたが、計画を大幅に上回る増収、営業増益で折り返しています。
今期の通期売上高は、前期比20.9%増の364億8,100万円、営業利益を同31.8%増の73億円と予想しています。進捗率は売上高が46.9%、営業利益が46.2%。「ホロライブ」は3月に大型イベントを実施しているため、業績は下期に偏重する傾向があります。しかし、通期見通しを据え置きました。
カバーの11月26日時点のPERは32.5倍、ANYCOLORが12.6倍。PERは株価を1株当たりの純利益で除して求めるもので、株価が割安か割高かを判断することができます。純利益は通期予想で算出するため、カバーの業績が上振れることに期待されていることがわかります。
なお、カバーは通期の純利益を50億6,400万円と予想しており、上半期は21億2,000万円で折り返しました。
ANYCOLORの初値は4,810円で、現在は2,000円台前半で推移しています。公募価格を割り込むところまでは株安が進行していませんが、上場来安値となった2024年8月5日の1,900円が意識される水準まで下がってきました。
カバーは2024年10月24日に年初来安値の1,490円をつけたものの、11月の終わりにかけては2,000円台後半で推移しています。
「ホロライブ」のファン層と相性のよいトレーディングカードゲーム
カバーの直近通期の営業利益率は18.4%。ANYCOLORが38.6%。同じVTuberビジネスを展開している2社は、営業利益率に大きな差がついていました。カバーの「ホロライブ」は黎明期を支えたコアファン層に支えられており、大型イベントや受注生産のグッズ販売に依存している状態が続いていました。ファンを満足させる質の高いサービスを提供する必要があったのです。
一方、ANYCOLORはライトファンの獲得に邁進しました。そのため、アクリルスタンドやデジタルグッズの販売など、原価を抑えられる手軽な推し活グッズが収益の中心。利益率を高めることに成功していました。
カバーは上場時からこの課題を認識しており、利益率を高めるために物販を強化すると説明していました。