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コーエーテクモの2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日)の営業利益が前期比27.2%減の284億円となり、稼ぐ力が大幅に削がれた結果となりました。
2023年3月期の営業利益率は49.9%でしたが、2024年3月期は33.7%と、16.2%も落ち込みました。2025年3月期も会社の予想通り着地すると営業利益率は33.3%。稼ぐ力を取り戻す気配がありません。
注目すべきなのが、2024年3月22日にリリースした『Rise of the Ronin』。『仁王』や『NINJA GAIDEN』の開発チームであるTeam NINJAが手掛けたビッグタイトルでした。アクション性や時代設定、キャラクターなどユーザーの評価は極めて高いタイトルでしたが、ビジネス視点では大成功とはいかなかったようです。改めて大型タイトルの開発の難しさが浮き彫りになっています。
アトリエシリーズの新作がパッケージの不振の穴埋めを果たす
2024年3月期の売上高は、前期比7.9%増の845億円。コーエーテクモは期首に売上高を前期比21.1%増の950億円と予想していました。100億円以上も下回って着地しています。
2024年1月29日の第3四半期(2023年4月1日~2023年12月31日)の業績発表の時点では、売上高950億円の予想を堅持していました。下方修正を発表したのが2024年4月15日で、超大型タイトル『Rise of the Ronin』をリリースした後。下方修正の理由を「当期に発売及び配信開始したタイトルのうち、計画を下回るものがあった」としており、『Rise of the Ronin』が想定を下回った可能性も十分あります。
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※決算短信より筆者作成
ゲームを展開するエンタテインメント事業の2024年3月期パッケージの売上高は、前年同期比20.5%減の298億円。オンライン・モバイルが同38.2%増の487億円でした。同社は2023年9月23日に『レスレリアーナのアトリエ ~忘れられた錬金術と極夜の解放者~(レスレリ)』をリリースしています。このタイトルはリリースの1ヶ月後に300万ダウンロードを突破。パッケージの販売不振を『アトリエ』シリーズのモバイルゲームがカバーした格好です。
コーエーテクモは2023年12月20日に『レスレリ』を開発したアカツキと資本業務提携契約を締結すると発表しています。コーエーはアカツキの株式113万株を取得して7.97%を保有する大株主となりました。
エンタテインメント事業の売上高全体におけるモバイルの売上高は6割。かつては『信長の野望』シリーズで収益基盤を築いていましたが、今や『アトリエ』シリーズは無視できないどころか業績をけん引する存在となりました。資本業務提携は経営陣が『アトリエ』のIP発展に本腰を入れたことの表れと見て間違いないでしょう。
■2024年3月期エンタテインメント事業売上高の内訳
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※決算説明資料より