マイクロソフトによるアクティビジョン・ブリザードの買収をめぐって、イギリスの競争・市場庁(Competition and Markets Authority、以下CMA)が買収の承認を却下した件ですが、マイクロソフトによる上訴の審理が7月に開始されます。
CMAは4月に買収承認を却下、マイクロソフトは徹底抗戦
2022年1月の発表以来各国で議論が続けられている、マイクロソフトによるアクティビジョン・ブリザードの買収問題。日本をはじめ、いくつかの国では買収の承認がなされ、今月にはEUの欧州委員会も買収を条件付きで承認するといった動きを見せています。
しかし一方で、クラウドゲーム市場における独占の懸念からCMAは本件の承認を却下しており、マイクロソフトがWindowsを所有していること、Xboxという自社のハードウェアと有力なタイトルがあること、クラウドサービスに適したインフラやシステムを有していることなどから、市場で既に強い優位性を持っていると指摘していました。
このCMAの決定に対してマイクロソフトは声明文を発表し、徹底抗戦の構えに。EU規制当局の決定を覆したこともあるような一流の弁護士を雇って、競争審判所(Competition Appeal Tribunal、以下CAT)に本件の上訴を行いました。
マイクロソフトが示す5つの根拠―CMAの決定は誤りがある
競争審判所への上訴に際し、マイクロソフトが提出した本件に関する文書が確認できます。この文章のなかではCMAの決定に対して、大きく分けて5つの根拠から主張、反論をしています。
CMAはクラウドゲーム市場におけるマイクロソフトの地位を評価する際に、ネイティブゲーム(ディスクやダウンロードによって、自身のデバイスにインストールされたゲームにアクセスする方法)からの制約を考慮しなかったことで、判断を誤った。
CMAはマイクロソフトと他社が締結した、長期におけるコンテンツ提供の契約を適切に評価、考慮しなかった。
「合併がなければアクティビジョン・ブリザードがクラウドサービスでゲームを提供する可能性があった」とするCMAの主張は誤りで、不合理的な結論のつけかたである。
マイクロソフトとアクティビジョン・ブリザードの合併後、アクティビジョン・ブリザードのコンテンツへのアクセスをマイクロソフトが留保することで他のクラウドゲームサービスを封鎖する能力がある、というCMAの主張は違法である。
マイクロソフトのSLC(実質的な競争減殺)是正措置に対し、CMAの決定は不当な行為であり、CMAはコモン・ロー上の義務やCMA独自の救済ガイダンスに違反した行為を行っている。
文書の最後ではマイクロソフトがCMAに対して、決定の全面撤回と本件の上訴にかかった費用の支払い、裁判所が適切に判断した救済策の追加などを認めるよう要求しています。
CATでの本件の審理は7月24日から2週間かけて行われることが予定されており、上訴の結果やその後の動きなどにも注目です。果たしてイギリスにおける法廷闘争に、決着は訪れるのでしょうか…。
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