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ゲームの受託開発などを行うユークスが、2024年1月期(2023年2月1日~2024年1月31日)に13億4,900万円の純損失を計上しました。
2023年8月31日に社運をかけてリリースした『DC デュアルフォース』の不具合に対応しきれず、2024年2月29日にサービスを終了。本タイトルに関連する資産16億5,500万円の減損損失を計上したためです。この事業の責任者だった元取締役副社長・山元哲治氏は辞任しています。
ユークスは2021年10月にDCコミックスからライセンスを取得し、オンライントレーディングカードゲームを開発すると発表していました。同社が受託開発事業メインの会社からの転換点となる記念すべき作品となるはずでしたが、このゲームは再起できないほどの大失敗に終わりました。
ユークスは営業活動を強化し、開発案件の強化を行うとしています。
32億円を見込んでいた売上高がわずか5,000万円に
2024年1月期の売上高は前期比5.0%減の40億8,700万円、営業利益は同81.1%減の1億7,900万円でした。ユークスは2024年1月期の期首に、通期の売上高を前期比84.3%増の79億2,300万円と予想していました。売上高は期首予想の半分ほどで着地したことになります。『DC デュアルフォース』の開発・運営を担うパブリッシング事業の売上として、32億1,000万円を想定していましたが、実績は5,000万円ほどでした。
ユークスは2025年1月期(2024年2月1日~2025年1月31日)の売上高を前期比1.1%減の40億4,000万円、営業利益を同121.4%増の3億9,700万円と予想しています。『DC デュアルフォース』の広告宣伝費が抑えられることで営業増益の予想を出していますが、トップラインの伸びしろは完全に失われました。
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※決算短信より筆者作成
ユークスはアメリカのプロレス団体「All Elite Wrestling(AWE)」の受託開発案件である『AWE:Fight Forever』や、ディースリー・パブリッシャーの『ま~るい地球が四角くなった!? デジボク地球防衛軍 EARTH DEFENSE FORCE: WORLD BROTHERS』、バンダイナムコの『テイルズ オブ アライズ』などの開発に携わっています。
受託開発案件は安定した収益が期待できる一方で成長力に乏しく、ユークスはこれまでに新たな事業展開に向けた挑戦を重ねてきました。
プロレスラー蝶野氏と衝突したとの噂も
2005年11月に新日本プロレスリングの株式51.5%を取得して子会社化しています。ユークスはもともとプロレスゲームの開発に強みを持っていましたが、実際のプロレス団体の経営に参画しました。
しかし、2012年1月にブシロードに持株のすべてを譲渡しました。ユークスは興行に対する経営ノウハウがなく、現場責任者だった蝶野正洋氏と軋轢が生じていたとも言われています。
2016年にはリアルタイムレンダリングエンジン「ALiS ZERO」を独自開発。この技術を使って初音ミクのCGモーションデータ制作やプロジェクトセカイのリアルタイムCG制作などを行うXR事業も展開しています。しかし、XR事業の売上は5億円程度で貢献度が低く、収益も安定していません。
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※決算説明資料より
セガサミーとの結びつきが深いためにパチンコ・パチスロの企画・映像制作なども行っています。こちらの売上高は10億円程度で貴重な収益基盤の一つですが、成長スピードは速くありません。
開発が上手く行かなかっただけなのか?
ユークスは2021年3月にパブリッシング事業への進出をアナウンスしました。ちょうどこのタイミングで入社したのが山元哲治氏でした。