2024年9月、コンサルティング・ファームのEYストラテジー・アンド・コンサルティング(EYSC)は、メディア・エンターテインメント業界向けの専門チームを発足したと発表。「東京ゲームショウ2024」では、継続的な収益確保を目指すライブサービスゲームへのインサイトを提供するセッションを行いました。
金融、医療、公共・社会インフラと活躍の場を選ばない同社から見たゲーム業界の現状と課題とは? TMT(テクノロジー/メディア・エンターテインメント/テレコム)セクター パートナーを務める今市拓郎氏に話をうかがいました。

経営層とクリエイターのやりとりを円滑にするコンサルティング
――まずは自己紹介をお願いします。
今市拓郎氏(以下、今市)EYSCのTMTセクター パートナーの今市拓郎です。弊社に参画したのは今年の2月で、前職は総合系コンサルティングファームで17年ほどメディアエンターテインメント業界のクライアントを担当していました。EYSCでも、引き続きメディアエンターテインメントのサブセクターを担当しています。
――東京ゲームショウ2024のフォーラム「ゲーム開発の未来-Future of game creation-/エンタメ業界のCVC投資戦略」でも、ゲストを招いたセッションを開催していましたね。
今市東京ゲームショウへ参加するのは弊社初の取り組みで、聴講者のみなさんにはコンサルティング会社が参加していることがかなり珍しいものに映ったのではないでしょうか。
ビデオゲームというエンターテインメントビジネスの最前線に、我々のようなコンサルタントが入るケースはあまりないことです。しかし、近年は経営層と現場のクリエイター陣のやり取りがより重要になっていく動きを見せていることもあり、経営層側の方々とお仕事をさせていただいています。TGSでは、さらにもう一歩踏み込む形で「ライブサービスゲーム」というテーマを扱いました。
――東京ゲームショウに先駆けて、9月には映像、音楽、ゲームなどの幅広いエンタメ企業に向けた専門チームを発足し、コンサルティングサービスの支援体制を強化するというリリースが発表されました。どのような経緯によるものでしょうか。
EY Japan、メディア・エンターテインメント業界向けコンサルティングサービスの支援体制を強化
今市かねてより、業界ごとに専門の部門を設けて課題の解決をお手伝いしてきましたが、近年は各業界固有の課題をしっかりと理解したうえでサービスを提供をすることがより一層重要になってきました。
例えば、製造業向けのサービスとエンタメ企業向けのサービスでは、同じ管理会計プロジェクトでもこちらが持つべき知識や視点が大きく異なります。そういった軸足をより一層しっかりと固めて、クライアントごとに最適なソリューションを提供しようというものです。
ライブサービスゲームをヒットさせるにはBIが必要不可欠
――ゲーム業界のビジネスモデルの特徴について教えてください。
今市例えば、従来の売り切り型コンソールゲームは、売上の見込みをある程度立てたうえで開発予算を確保し、リリースでリクープし、収益を上げるという投資回収型ビジネスです。
しかし、最近需要が高まり続けているライブサービスはリリース後もユーザーを飽きさせないコンテンツを定期的に投入する必要があり、運営費や開発費も持続的に発生しますので、ゲームというカテゴリは同じでもマネジメントの仕方は大きく変わります。こういったところが特徴的ですね。
経営層はライブサービスではリリース後も引き続き注視し、プロデューサーを始めとする現場のクリエイターたちと対話を重ねる必要があります。
そういった局面で、私たちのようなコンサルティングサービスがお役に立ちます。ゲーム開発の経験はなくとも、事業管理という目線からご提案を行えます。
――ライブサービスは成功例が増えている一方、今は世界中でユーザーの時間とお金を奪い合う形になっているように感じられます。コンサルティング企業の視点からは、どのように見えていますか。
今市TGSのフォーラムでも紹介しましたが、世界中の大小さまざまな数百のゲームスタジオを対象に調査を行ったところ「約95%のスタジオがライブサービスゲームをリリースしたり、ローンチの準備をしたりしている」という結果が出ました。