サイバージェントが2023年7月26日に下方修正を発表しました。
同社は、2023年9月期通期の営業利益を400億円～500億円と予想していましたが、上限の半分となる250億円に修正。150億円から200億円としていた純利益も60億円と上限の3割程度となることから、同社株は7月24日に900円を割り込みました。
『ウマ娘 プリティーダービー』が好調だった2021年7月ごろの株価は2,400円を超えていたサイバーエージェントに逆風が吹いています。
不調の要因として、ゲーム事業において収益性の高いタイトルが減収したためとしていますが、主力の広告事業も伸び悩んでいるように見え、サイバーエージェント冬の時代の到来を予感させます。
先行投資に位置付けていた広告費と人件費が重荷
サイバーエージェントは『ウマ娘』のメガヒットによって、2021年9月期の売上高が前期比39.3%増の6,664億円となり、営業利益は前期の3倍となる1,043億円に跳ね上がりました。しかし、その反動減で2022年9月期の営業利益は前期比33.7%減の691億円まで大幅に低下。2023年3月期は更に63.8%縮小して250億円となる見込みです。
※決算短信より
注目したいのは本業で稼ぐ力を表す営業利益率。『ウマ娘』効果が働いた2021年9月期は15.7%まで高まりました。なお、この数字はソーシャルゲームのコンプガチャ問題で、消費者庁が規制強化を行う直前の2012年9月期の営業利益率12.3%を上回るものでした。
このように圧倒的な収益力を誇っていましたが、ヒットの反動減に見舞われた2023年9月期の営業利益率は3.5%と、『ウマ娘』効果やコロナ特需が発生する2019年9月期の9.8%を大きく下回る見込みです。
サイバーエージェントは、2022年9月期から広告費と人件費への投資を加速していました。2022年10月から2023年6月までの広告費は、2019年9月期の同期間と比較して1.4倍の341億円、人件費は2.1倍の443億円となっています。
※決算説明資料より
主にこの2つの負担が重く、それに対するリターン（売上高）が出ていないというのが現状です。
人材強化は吉と出るか凶と出るか
2023年9月期第3四半期のゲーム事業の売上高は前期比21.2%減の1,368億円。3Qの売上高の縮小が特に顕著で、四半期単体では前年同期間比27.0%減の337億円と、『ウマ娘』のヒットから四半期単体で最も少ない数字となりました。
■ゲーム事業売上高推移
※決算説明資料より
『ウマ娘』は2023年2月に誕生2周年を迎え、最大120連ガチャ無料などのキャンペーンを実施。山手線や大阪環状線でラッピングトレインを走らせるなど、宣伝活動も強化していました。
2022年2月にも1周年記念キャンペーンを実施して売上高の底上げを図り、その後、同様の反動減を受けているのがわかります。売上高の波は昨年とほぼ同様の動きをしており、年を重ねるごとに勢いがなくなっているのがわかります。
2023年9月期のゲーム事業は3Q単体で1億円の赤字でした。ゲーム事業が四半期単体で赤字になったのは、2019年9月期以降、初めてのことです。
■ゲーム事業営業利益
※決算説明資料より
2023年9月期3Q時点で、同社のゲーム事業連結役職員数は2,717名。2Qと比較して200名近く増加しています。一方で同社の3Qの広告費は132億円で、キャンペーンがあった2Qと比較して24億円減少しています。
