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新しいモノやコトでZ世代にリーチし、なおかつ共に成長する方法は何でしょうか?
誰もが常時オンライン接続している時代、特定のIPを集客可能なコンテンツに育て上げ、それによって構築されたコミュニティを維持するのはむしろ多大な工夫を必要とします。
今回は東京ゲームショウ2023で開催されたビジネスセミナー「人気IPを育てるユーザーコミュニティのつくり方」から、「ユーザーから根強く支持されるIP戦略」について学んでいきましょう。
登壇者
ライアットゲームズ ブランドマネージャー: アクション
佐藤 翔太氏バンダイナムコエンターテインメント
第3IP事業ディビジョン ニュービジネスプロダクション クロスメディア課 マネージャー
吉本 行気氏ファンベースカンパニー 会長
佐藤 尚之氏日経BP 日経BPトレンドメディア ユニット編集委員
吾妻 拓氏(モデレーター)
「エージェント」の出身国
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ライアットゲームズ ブランドマネージャーの佐藤翔太氏は、FPSゲーム『VALORANT』のイベントプランナーでもあります。
「前提として、我々のゲームタイトルは全世界で展開されています。グローバル故に、プレイヤーはタイトルに対して距離を感じてしまいがちです」
殆どの人は、自分の身近な存在にしか共感を覚えません。漫画作品でも、舞台が国内から世界になると急に人気が落ちてしまうということがよくあります。そうしたことを避けるためには、誰しもが持っているであろう「出身国」という背景を強調することであると佐藤翔太氏は語ります。
「だからこそ、『VALORANT』のエージェント(キャラクター)は実在する各国の出身という設定にしています。日本のサーバーでプレイしていることに喜びを感じてほしいというのがあり、日本出身のエージェントが登場した時は日本ならではの表現を盛り込んだり、日本向けのオフラインイベントを開催します」
これは、現在開催されているラグビーワールドカップのようなスポーツ大会にも共通する要素。各国のファンは、当然ながら自分の出身国のナショナルチームを応援します。それ故に各チームにはオンリーワンの特色があり、またそれが他国のファンからも注目される要因となります。
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さて、『VALORANT』のユーザー及びファンの約70%はいわゆる「Z世代」ですが、一方でZ世代は「タイムパフォーマンス(タイパ)」という言葉を好んで使うほど時間に対してセンシティブな世代でもあります。そんな彼らの「可処分時間」が、1試合に時間のかかるゲームとして知られている『VALORANT』に向けられていることも、要注目です。
地域毎の特色を発揮する「電音部」
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次の登壇者は、バンダイナムコエンターテインメント 第3IP事業ディビジョン ニュービジネスプロダクション クロスメディア課 マネージャーの吉本行気氏です。
吉本氏は音楽原作キャラクタープロジェクト「電音部」のマーケティングを手掛けています。今回の講演では、ゲームとそのキャラクターを通じた「地域の特色の発揮」について解説されました。
「『電音部』は、アキバエリア、ハラジュクエリア、アザブエリアなどの実在の地域をモチーフにしたエリアがあります。それらの地域のカルチャーをベースに、音楽性も各地域によって異なります」
アキバエリアの場合はアニメやアイドル、ハラジュクエリアはロリポップ、アザブエリアはハウスミュージック、シブヤエリアはテクノ系といった具合に、取り扱う音楽に「地域性」を与えているのが大きな特徴です。
その上で、「電音部」の各パートナー企業に最大限の自立性を与える「DAO型IP」としての取り組みも始めています。これは新しいエリアをパートナー企業が独自に制作できる仕組み。トップダウン方式でライセンスを付与するという方式とは一線を画すものでもあります。
「既に大阪・心斎橋の“シンサイバシエリア”が登場しています。大都市圏ではない地方都市や、海外の都市でも大歓迎です!」
信頼できるのは「家族と友人」
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最後の登壇者は、ファンベースカンパニー 会長の佐藤尚之氏です。