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ガンホー・オンライン・エンターテイメントの2023年12月期(2023年1月1日~2023年12月31日)の決算は、下半期の苦戦が鮮明となる内容でした。
通期の売上高は前年同期比18.8%増の1,253億1,500万円、営業利益は同0.8%増の278億8,000万円。純利益は同13.6%減の164億3,300万円でした。2割の増収となったものの、営業利益は横ばい。純利益は1割減でした。
ガンホーは上半期が5割近い増収、3割もの営業増益。純利益も2割増で折り返していました。子会社である韓国Gravity社の『ラグナロク』シリーズが好調でしたが、下半期は早くも失速の兆しが見えてきました。
自社株買いを行うも株価は下がる
ガンホーの2023年12月期の営業利益率は22.2%。前年同期と比べて4.0ポイント落ちました。売上が同規模のMIXIの営業利益率が12%台、ディー・エヌ・エーが3%程度であることを考えると、高水準であることは間違いありません。
しかし、ガンホーの営業利益率は過去5期で最低となりました。
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※決算短信より筆者作成
ガンホーの株価は決算発表前の2024年2月13日の終値が2,443円でしたが、発表後の2月19日は一時13日の終値より12.4%低い2,141円をつけました。
しかも、ガンホーは決算発表と同日に自社株買いの発表をしています。これは50億円を投じて、220万の自社株を取得するというもの。自社株買いは典型的な株価対策で、市場に出回る株数が引き締まるため、1株当たりの希少性が上がって(自社株買いだけに焦点を当てると)理論上は株価が上がります。
株価対策を行っても売り込まれていることから、市場は2024年12月期の決算内容をネガティブに見ていると捉えられます。2月27日時点でのPBR(株価純資産倍率)は1.05倍。東京証券取引所はPBR1倍以下の銘柄に対して改善策を開示するよう求めています。現在のガンホーは、クリアすべき水準ギリギリのところに立っています。
『ラグナロクオリジン』のヒットで売上構成は変化
ガンホーの業績を四半期単体で見ると、下半期の軟調ぶりが際立ちます。特に4Q(2023年10月1日~2023年12月31日)の売上高は274.6億円で、前年同期間比16.9%の減少。営業利益に至っては44.3%少ない43.2億円でした。
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※決算説明資料より
ガンホーの株価は、2023年6月21日に年初来高値の3,011円をつけました。現在よりも800円近い高値をつけていたのです。このとき、成長ドライバーとして期待されていたのが、韓国のGravityでした。MMORPG『ラグナロクオンライン』で知られる会社です。
Gravityは韓国・日本・北米で『ラグナロクオリジン』を提供していましたが、2022年9月15日に台湾・香港・マカオでリリースし、これがヒットします。2022年12月期4QのGravityの売上高は、前年同期間の2倍となる175億8,800万円となりました。更に2023年4月6日に東南アジアで同タイトルをリリースしました。
その効果が加わって、2023年12月期2Q(2023年4月1日~6月30日)のGravityの売上高は、前年同期間の2.7倍に跳ね上がります。売上高は四半期単体で2019年以来最高となる245億5,000万円となりました。