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eスポーツ事業を手掛けるGLOE(旧ウェルプレイド・ライゼスト)が、上半期を堅実な数字で折り返しました。
同社は2024年10月期(2023年11月1日~2024年10月31日)の通期売上高を前期比14.8%増の26億円と予想しています。第2四半期累計(2023年11月1日~2024年4月30日)の売上高は11億3,100万円で、進捗率は43.5%。下期に偏重する傾向があるため、堅調に歩んでいると言えるでしょう。
事業会社と組んだ小型のeスポーツイベントの開催や、インフルエンサーなどとコラボレーションする商品企画が奏功しています。
オフラインイベントの実施で急低下した利益率が回復
GLOEは2024年10月から連結決算となっているために前期との単純な比較はできませんが、連結をしても上半期の売上高は前年同期間比で5.2%減少しています。これは2023年10月期第1四半期(2022年11月1日~2023年1月31日)に実施した大型オフラインイベントからの反動減。GLOEはこのとき、四半期単体の売上高が8億円近くとなって過去最高となりました。
しかしながら、大型のオフラインイベントは舞台造作や運営スタッフなどの外注費が利益を圧迫します。そのため、2023年10月期の営業利益率は0.6%と赤字ギリギリの水準まで落ち込みました。
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※決算短信より筆者作成
これがGLOEの弱点とも言えるもので、コロナ禍が収まって大型のイベントは行えるようになったものの、それに頼ると利益率が下がってしまうのです。しかし、2024年10月期の営業利益率は5.8%まで回復する見込みです。
稼ぐ力が回復していることは、市場もポジティブに評価している様子が見て取れます。2023年10月期第1四半期の決算を発表した後、2,000円近かったGLOEの株価は低調となり、2023年4月17日に一時1,590円まで下がっています。現在は2,000円台まで回復しました。
GLOEはイベント企画や運営を行うクライアントワークと、eスポーツに関連するIPブランドを活用したサービスを開発するブランドプロデュースの2つの事業を展開しています。
2024年10月期第2四半期累計のクライアントワークの売上高は6億2,800万円。前年同期間比で2割の減収となるものの、前期の大型案件の影響を除外すると増収での着地。2Q(2024年2月1日~2024年4月30日)単体の売上高は、前年同期間比18.8%増の2億9,100万円でした。
社内eスポーツ運動会が組織を活性化する時代に
eスポーツイベントと聞くと、プロチームが集まる大会をイメージしがち。ところが、GLOEは事業会社向けに社員や地域住民との交流を目的としたイベントを実施しており、新たな地平を切り開いています。
2024年10月期に実施したイベントの一つが、2024年2月4日にTOPPANホールディングスの社員とその家族、内定者を対象として開催した「TOPPA!!!TOPPAN FESTIVAL 2024」。オンラインとオフラインの両方で開催したもので、全国の事業所をオンラインで繋いだeスポーツ大会などを行いました。本社ビルとタイの現地法人の従業員同士が『スーパーボンバーマンR2』で対戦し、交流を深めています。
このイベントは、グループ全体の社員の相互理解を促進することが目的。現在、多くの企業が従業員向けのレクリエーションの創出に頭を悩ませています。昭和や平成時代のような社内運動会の開催では、逆にモチベーションが下がってしまうこともあるからです。
TOPPANはeスポーツ企業支援サービスを提供しており、事業会社向けのeスポーツ運動会などの提案を行っています。日立システムズ、京セラなどで採用されました。
TOPPANとともに事業会社向けの需要を開拓することができれば、GLOEはイベントの企画・運営を行うクライアントワークの収益性を高めることができます。
今期はその他に、不動産開発などを行ういちご地所がテナントと近隣住民などとの交流を図る、ゲーム懇親会も開催しています。
GLOEの代表取締役である古澤明仁氏は、「e-Sports Business.jp」が実施した2024年無料オンラインイベント「2024年のeスポーツ~未来を切り開くトレンドと戦略~」において、地方イベントや企業交流会を企画し、教育や社会福祉、地方創生の分野でeスポーツの活用法は様々あると語っています。
今期のクライアントワークは、まさにその下地となる実績を作ったと言えるでしょう。
生配信用のツールを提供する配信技術研究所を子会社化
盤石な収益基盤に成長しつつあるのが、ブランドプロデュース。2024年10月期第2四半期累計の売上高は、前年同期間比23.1%増の5億100万円でした。
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※決算説明資料より
VTuberの渋谷ハルさん、白雪レイドさんとコラボレーションしたアルコール飲料の開発や、配信者ksonさんと共同開発したメガネの販売などを行いました。
この事業は商品企画の他に、キャスティングやイベントの配信制作などを行っています。
GLOEは配信サービスの強化に動きました。2024年6月28日に配信技術研究所の第三者割当増資を引き受け、50.1%の株式を取得して子会社化したのです。
この会社は配信を行うクリエイターに対して、ライブ配信のデータを見える化するツールの提供を行っています。視聴時間を評価指標に用い、視聴数やアクセス数とは異なり”盛り上がり”を可視化することができるといいます。
一般財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAJ)のレポートによると、2023年の動画配信市場規模は5,250億円と推計され、今後も成長を続けると予想されています。
GLOEのブランドプロデュースは、配信などのゲームやeスポーツを取り巻く周辺産業が対象。クリエイターをサポートするツールの提供は事業の根幹を支えるものと言えるでしょう。
GLOEはeスポーツを取り巻く市場の動向と経営の方向性、そして事業戦略、実績が噛み合ってきた印象を受けます。