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ネクソンの2023年12月期上半期(2023年1月1日~2023年6月30日)の売上高が前年同期間比24.8%増の2,185億円、営業利益が同37.1%増の1,147億円となり、大幅な増収増益となりました。営業利益は38.4%で、前年同期間を3.4ポイントも上回りました。
2023年1月12日に実施した主力タイトルの『アラド戦記』の旧正月アップデートのパッケージ販売が好評だった他、韓国で発売した『Wars of Prasia』が増収に貢献しました。日本においては2周年記念を機にユーザーを獲得した『ブルーアーカイブ』が売り上げに貢献しています。
しかし、『Wars of Prasia』は3Q(2023年7月1日~2023年9月30日)の売上について2Q比で減少を見込むなど、苦戦しています。
韓国のMMORPG人気の波に乗ることができるか
ネクソンは2022年12月期(2022年1月1日~2022年12月31日)の売上高が前期比28.9%増の3,537億円、営業利益が13.3%増の1,037億円でした。減収減益だった前期と比較して大幅な増収増益での着地となりました。
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※決算短信より
しかし、人件費や広告宣伝費が嵩んで、営業利益率は30%を割っています。特に人材強化は数字に顕著に表れています。2021年12月期の従業員は400人程度の増加でしたが、2022年12月期は800人も増えています。
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※有価証券報告書より
また、平均年収は2021年12月期の651万円から664万円へと2%上昇しました。人員を強化して開発力を高めようとする様子が伝わってきます。なお、ネクソンの従業員が増加しているのは韓国で、日本法人や中国法人の従業員数はむしろ減少しています。
韓国に次いで人員を増やしているのがアメリカ。ネクソンは本場韓国での競争力を高めようとしているのはもちろんですが、アメリカ攻略にも力をかけているのが分かります。
2023年12月期2Q韓国エリアの売上高は前年同期間比21.1%増の620億7,100万円でした。大幅な増収を達成しています。貢献度の高かったタイトルが2023年3月30日にリリースした『Wars of Prasia』。多人数参加型オンラインRPG(MMORPG)ゲームです。
■韓国売上高推移
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※決算説明資料より
このタイトルのPCの売上収益は業績予想を上回ったものの、3Qは2Q比で減収を見込んでいます。韓国では2021年にネクソンの主力タイトル『メイプルストーリー』で確率操作疑惑が持ち上がり、謝罪に追い込まれました。失望した一部のゲームファンが離脱し、『ロストアーク』に流入。新規ユーザー数が急増するなど、MMORPGの勢力図に変化が訪れました。
しかし、中国版の開発を先行させて韓国でのローカライズが不十分だったことから、『ロストアーク』からもユーザーが離れてしまいます。
その受け皿となったのが、カカオゲームズが2023年にリリースした『オーディン:ヴァルハラ・ライジング』。このタイトルはリリースから3か月にわたってApp StoreとGoogle Playでセールスランキング1位を獲得。韓国ゲーム大賞を受賞しました。
『Wars of Prasia』は『オーディン:ヴァルハラ・ライジング』の人気に押されて、ユーザー数が伸び悩んでいるものと予想できます。
ただし、韓国のMMORPGの人気は絶大で、『ロストアーク』のように一度過疎化したゲームの人気が再燃することもあります。『Wars of Prasia』が勢力図を塗り替えられるかは注目のポイントとなるでしょう。