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全日制専門校の総合学園を展開し、プロeスポーツチームのHuman Academy CREST GAMINGを擁するヒューマンアカデミー株式会社が、小・中学校、高校へゲーミングPCや周辺機器を寄付するチャリティープランの企画を進行しています。
同社が学生向けチャリティーの先に思い描いているeスポーツとゲーマーの未来とは? 今回、チャリティープランに賛同し、参画したゲームメディア「INSIDE」「GameSpark」を運営する株式会社イード 社長室の森元行氏を交えて、ヒューマンアカデミー 全日制教育事業部・e-Sports営業部 エグゼクティブマネージャーの黒田俊平氏に話をうかがいました。
◆学校にゲーミングデバイスを寄贈し、スポンサー企業の広報活動を支援
――はじめに、今回企画しているチャリティープランの詳細についてお聞かせください。
黒田 まず、学生に向けて自社をアピールしたい、自社を認知してもらいたいスポンサー企業様に弊社から提示するプランをご購入いただきます。
その後、プランに含まれるゲーミングPCや周辺機器などを弊社から小・中学校、高校などへ寄贈させていただき、eスポーツの認知を広めるとともに、プランをご購入いただいた企業様の広報・認知度アップにも協力させていだきます。
――具体的にはどのようなプランがあるのでしょうか。
黒田 ゲーミングPCと周辺機器を合わせた5セットを1年間の保守点検付きで寄贈するプランから、モニター・キーボード・マウス・ゲーミングチェアなどPCをのぞく周辺機器の一部を寄贈するプランまで、5通りを用意しています。
――寄贈先はヒューマンアカデミーが選定するのでしょうか?
黒田 弊社は全日制専門校を展開しており、小・中学校、高校などとのネットワークがありますので、そちらはお任せください。また、寄贈先を指定したい場合もご相談いただければと思います。
森 最近は、こうしたチャリティー(寄贈)を行う企業や、興味を持つ企業が増えてきていると思います。eスポーツではありませんが、ヒューマンアカデミーさんでは以前からバスケットボールやゴールの寄贈をしていますよね。
黒田 弊社はプロバスケットボールチームの大阪エヴェッサを擁していますので、大阪の学校や介護施設に寄贈してバスケットボールを広める普及活動の一助を担っています。スポンサー企業様と提携して、同じことをeスポーツでもできればよいなと。
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◆「PCでeスポーツを楽しむ学生」をもっと増やしたい
――黒田氏の目から、今の日本eスポーツシーンはどのように見えていますか?
黒田 「eスポーツ」という言葉・概念の認知度は年々上がっており、市場は拡大傾向にあります。その一方で「ゲーミングPCや機材を用意する」ハードルが高く、シーンがより盛り上がる環境がなかなか整わないとも感じています。
家庭用ゲーム機でもプレイできる『フォートナイト』や『Apex Legends』は実際に遊んでいるという学生さんも多いのですが、PCでしかプレイできない『リーグ・オブ・レジェンド』や『VALORANT』になると、遊んだことがある人が明確に少なくなります。
そうした人たちに少しでもプレイする機会・環境を与えてあげられたら……というのがこのプランを企画した理由です。イードさんに相談したらご賛同いただけたうえにプラン購入までご決断いただけて、弾みがつきました。
――イードが参画した理由をお聞かせください。
森 私たちとしても「eスポーツ観戦経験がある人は増えているが、競技タイトルを実際に遊ぶ人の数はまだ伸びしろがある」という感覚がありますので、ささやかではありますがご協力させていただくことにしました。ゲーム人口の増大に、少しでも寄与できればいいなと。
ところで、プランの中には「周辺機器のみ」というコースもありますが、周辺機器だけでも寄贈先の気持ちは変わるものでしょうか?
黒田 明確に変わりますね。特に、ゲーミング仕様のキーボードやゲーミングチェアはあるかないかで大違いだと思います。
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◆ヒューマンアカデミーが描くゲーマーのキャリアプラン
――授業でPCを活用する中学や高校が増えていますが、貴校の生徒のPC事情はどのようなものですか?
黒田 弊社では世界で戦うプロゲーマーを育成する「e-Sportsカレッジ」を展開していますが、毎年、新入生の2割ほどは自宅にPCがないと聞いています。e-Sportsカレッジはこれまで1年制で展開してきましたが、PCの使い方やITリテラシーにも精通してもらう目的で2024年度からは2年制で展開していきます。
Human Academy CREST GAMING――将来、ゲームのプレイ動画などを配信しようと思ったらやはりPCの知識も必要ですよね。そうして得たPCの知識やITリテラシーは、プロゲーマーになれなかったとしても他の仕事で役立てられそうです。
黒田 そういう側面も考えてのことですね。また、プロゲーマーを目指してゲームの技術や戦略を学び、練り込んでいくゲームの実践にも同じ一面があると考えています。
例えば、自分の腕前を上達させ、強くなるためにはPDCAを高速で回し続ける必要がありますが、それもプロゲーマー以外の道で十分活用できる能力だと思います。
(※PDCAはPlan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)のプロセスを繰り返して効率を改善するための基本的なフレームワーク)
――今回のチャリティープランが広まれば、それをきっかけにe-Sportsカレッジに興味を抱く学生も増えると思います。カレッジ卒業後の進路はどのように考えていますか?
黒田 プロゲーマーになれればそれが一番ですが、全員がその道を進めるわけではありません。ゲーミング機器関連企業への就職を支援するなど、プロゲーマー以外の進路やキャリアプランの提示にも力を入れていきます。
また、プロゲーマーになれても、いつかは引退が待っています。そうした選手に次なるキャリアプランを示すのも大切で、今後一層力を入れていきます。具体的には、当カレッジにて無償でリスキリング(職業能力の再開発、再教育)を行い、新たな道へ送り出す動きを進めています。
――プロチームと教育機関を備えるヒューマンアカデミーならではですね。
黒田 はい。他のプロチームにはない強みになると考えています。
◆万人が楽しめるeスポーツの魅力をより一層広めたい
――チャリティープランにスポンサーとして参加する企業についてもお聞かせください。想定しているのはどのような企業でしょうか。
黒田 最近、ゲームとまったく関わりのない業界の企業からも「社内の取り組みとしてeスポーツを始めたいけれど、何から手を付ければよいか分からない」というご相談をよくいただくようになりました。
コミュニケーション不足を補う「福利厚生としてのeスポーツ」もどんどん浸透していますので、若い社員にアピールする手法のひとつとして、どのような業界の企業にもオススメできるプランだと思います。
ご相談をいただくのは人事の方である場合が多く「内定を出した学生同士でeスポーツを楽しんでもらい、親交を深めた状態で入社してもらう」というプランを考えておられるところもあるようです。
――なるほど。将来は「A社とB社から内定をもらえたけれど、社内にeスポーツ部があるB社にしよう」と企業を決める学生も出てくるかもしれませんね。それでは最後にあらためてチャリティープランの本格始動に向けてメッセージをお願いします。
黒田 まずは学校を寄贈先としたプランを展開する予定ですが、年齢・性別・障がいの有無などで差が出ないのがeスポーツのすばらしいところであり、それゆえに将来的にはあらゆる方にその楽しさや魅力を届けたいと考えています。
こうした弊社の理念に賛同してくださる方、若年層に自社をPRしたい方、社内でeスポーツの取り組みを始めたい方であれば、ゲームと関わりのない業界も歓迎いたします。
森 このチャリティープランを通して、1人でも多くの学生さんが「ゲーミングPCで楽しむeスポーツ」に触れてもらえたら嬉しいです。ゆくゆくは、教師の方々や親御さんにもeスポーツの楽しさや魅力が伝わったらいいですね!
Human Academy CREST GAMING