
2023年12月1日(金)、Live2D社が主催するイベント「alive 2023」が秋葉原UDXとオンラインでハイブリッド開催されました。「alive」は2D表現に関わるクリエイターが技術と情熱を共有する年に1度の祭典です。
本稿では、VTuberグループ「にじさんじ」を主軸としたエンターテイメント事業の展開で知られるANYCOLORによるセッション「Unityエンジニア×Live2Dデザイナー社員インタビュー」のレポートをお届けします。
「にじさんじ」を支えるデザイン部と技術スタジオ部
セッションでは、Unityエンジニアの代表として技術スタジオ部副部長 兼 Unityチームリーダーの門谷悠斗氏が、Live2Dデザイナーの代表としてデザイン部副部長 兼 Live2Dアートディレクターの野久保賢一氏が登壇しました。
まずは、両者からデザイン部と技術スタジオ部について簡単な紹介が行われました。各部署の編成と担当業務は以下のようになっています。
◆デザイン部
イラストチーム:イラストの監修、制作
グラフィックデザインチーム:グッズやポスターなどのデザイン
3Dチーム:3Dモデルの制作
2D進行チーム:イラストレーターや協力企業との連絡や、プロダクトの進行
Live2Dチーム:所属ライバーが普段の配信で使用する2Dモデルの制作と監修
◆技術スタジオ部
技術チーム:プログラマーを主体とする開発業務
スタジオチーム:放送や音声のエンジニア/スタジオ設備の運用業務
Unityチーム:Unityを使った開発業務
技術スタジオ部のUnityチームは、所属ライバーがLive2Dや3Dモデルを用いて配信を行うための「にじさんじアプリ」および「にじ3D」の開発・運用も行っています。
にじさんじアプリはANYCOLOR代表取締役の田角陸氏が独学によってプログラミング言語のSwiftで制作したものがベースになっており、それをUnityにリプレイスしたものが運用されています。当初はiOSのみの対応でしたが、その後Windowsアプリも開発されました。
ライバーにアプリや新衣装を配布する際のこだわり
「どんな瞬間(場面)に切り取られても、破綻がないように仕上げること」と野久保氏。その具体例の一つは、目の開閉です。
通常の瞬きだけでなく、眠いことの演出として意図的に“半開きの目”の表情を使う可能性もあるため、Live2Dモデルは目を閉じる途中の表情も瞳や瞳孔の位置に気を使い、ビジュアルのクオリティを保つようにしています。

野久保氏は「ファンの皆さんが(こういうところを)意識することはあまりないかもしれないが、配信を楽しむうえでノイズを与えないという意味では非常に意義が大きいと思っている」とコメント。
そして門谷氏はアプリ面のこだわりを「ライバーがすんなりと使えるよう、アプリをシンプルな形にまとめること」と語りました。
アプリには表情のキャリブレーション機能がありますが、Live2Dモデルの口が大きく動いていると生き生きと感じられて印象が良いため、口の開閉の認識は特に意識して実装したとのことです。
アプリのもうひとつのこだわりは、複数のライバーが同じ番組を配信できる「コラボ機能」。AWS(Amazon Web Services)上に構築したリアルタイムサーバーを経由することで、離れたところにいるライバーそれぞれの表情がリアルタイムで反映されるのが大きな特徴であり、魅力となっています。
この機能が実装される前は、コラボの際にビデオ通話できるツールを用意してその画面を相手側に送信するなど複雑な手順を踏む必要があったので、コラボにかかる労力が大きく改善されました。


Live2Dモデルの規格について
にじさんじのLive2Dモデルは1.0、2.0、3.0の3バージョンが用意されており、それぞれ以下のような特徴を持ちます。
1.0:通常のフェイシャル/頭部・胴体の可動
2.0:頭部の可動域をさらに拡張
3.0:胴体の可動域を大幅に拡張/体を前後に倒す動きの追加/4つの特殊表情の追加