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2023年12月1日に秋葉原UDXで開催されたイベント「alive 2023」。Live2D社が主催するこの大型イベントはLive2Dのクリエイターを対象にしたもので、数々のセッションや展示コーナーを設置してクリエイターの交流を図っていました。
ホロライブプロダクションを運営するカバー社は、そのセッションのひとつ「Live2Dを使用したプロジェクトをどのように進めたか (hololive Live2D 3.0参考例)」に登壇しました。
VTuberの世界では配信に使用するアバターとして重宝されているLive2Dですが、多くのクリエイターが参加する大規模な制作プロジェクトについて解説される機会は少なく、詳しく知らない人が多いはず。
本セッションではそのプロセスを企画立案からクロージングまで解説するとともに、ホロライブでは最新バージョンとなる「hololive Live2D 3.0」の実例を示しながら解説しました。
hololive Live2D 3.0 予告映像(ホロライブプロダクション公式Xより)
またセッションに登壇したクリエイターに単独取材するインタビュー企画も関連記事として実施しているので、そちらと併せてご覧ください。
「見える化」でプロジェクトの全体像をつねに把握する
セッションに登壇したのはLive 2Dの制作チームでマネージャーをしている平原翔大氏。Ver3.0のプロジェクトで陣頭指揮を執る人物です。
セッションは大きく5項目に分けられており、①企画立ち上げ、➁計画立案、➂計画の実行、➃監視・管理、➄クローズと評価について、作業の流れに沿う形でプロジェクトの進行プロセスを解説してくれました。
まず解説してくれたのが①企画立ち上げについて。そこでもっとも重要視したのは目標の明確化です。
何が目的のプロジェクトでどういった方向へ進むのか、何を優先するべきかをあらかじめ明確化し、プロジェクト全体を俯瞰で見られるようにするのが大事だと語る平原氏。全体を把握することで方向のブレを回避できますし、共通認識が構築できて意思統一が図れます。
また最終地点を明確化することでゴールを見えやすくし、参加メンバーのモチベーション向上をめざす意図も含まれているそうです。
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プロジェクトを俯瞰で把握したら、次にプロジェクトの規模と必要な人員、スケジュールの予想など必要な情報を洗い出します。各プロジェクトで必要とする情報が変わってきますが、Ver3.0では組織体制やスケジュールを洗い出しました。
また目的を「モデルとアプリの不満点の改善、技術アップデート」に設定。コンセプトを「新しい体験を視聴者に提供する」に定義しました。
実際に公開されたVer3.0では、新しい表情が実装されたり、表情のトラッキング精度を上げたりするなど、まさに技術的なアップデートと新体験の創出を実現。可動域の拡大など大幅なアップデートを遂げたVer2.0に続き、視聴者は2Dチームの技術力の高さに拍手を送っていました。
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続く➁計画立案のフェーズでは具体的にロードマップを作成することになります。
どれだけのタスクが必要になるのかを洗い出すのですが、まずはその数をピックアップ。その後、タスクに従って工数を算出します。
タスクは細かければ細かいほど抜けや漏れが少なくなるということで、どんなに小さなものでもピックアップして工数にカウント。そうすることでどのタスクをどのスタッフに割り振るかも見えてくるようになります。
その後、ツリーを描くようなイメージで必要なリソースを構成し、どれだけの作業があり、それを実現するにはどれだけの労力が必要になるか把握するわけです。
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続いて➂計画の実行についてです。
計画の実行は、まず実装したい機能のアイデア出しから始まりました。たとえば「ばいばい」のモーション、舌出しの表情、頬を膨らませる表情などです。それらはこの段階では取捨選択せず、実現が難しそうなものでもすべてリスト化します。