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ホロライブプロダクションを運営するカバーが快進撃を続けています。
2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日)の売上高は前期比47.5%増の301億6,600万円、営業利益は同55億3,600万円でした。営業利益率は18.4%で、3期連続で上昇。2025年3月期(2024年4月1日~2025年3月31日)は20.0%まで引き上げる計画です。
稼ぐ力を高めている背景として、原価が低いマーチャンダイジング(物販)の比率が高まっていることが挙げられます。2024年3月期は売上高に占めるマーチャンダイジングの割合は41.4%。前期から2.3ポイント上昇しました。
2024年3月に同時開催した大規模イベント「hololive SUPER EXPO 2024 Supported By BANDAI & hololive 5th fes. Capture the Moment Supported By Bushiroad」(以下「ホロライブ5th Fes./EXPO2024」)が大幅増収に寄与。今後の成長を担うのが海外事業ですが、この領域は「にじさんじ」を運営するANYCOLORが大苦戦しています。
フェスのプロジェクト売上は24億円
2025年3月期の売上高は前期の1.2倍となる364億8,100万円、営業利益は1.3倍の73億円を予想しています。売上成長率はややトーンダウンするものの、引き続き力強く成長する見込みです。
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※決算短信より筆者作成
カバーの増収要因は大きく2つあります。1つは「ホロライブ5th Fes./EXPO2024」を中心としたライブ/イベント分野。もう1つが海外事業です。
ライブ/イベント分野2024年3月期の売上高は、前期比63.4%増の56億100万円。この期の大型イベントは、北米で初開催した「hololive English 1st Concert -Connect the World-」と「ホロライブ5th Fes./EXPO2024」の2つがあり、特に後者が大成功を収めています。
「ホロライブ5th Fes./EXPO2024」のプロジェクト売上は前年比3割増の24億円。延べ動員数は25万6000人で、同じく前年比で3割増加しました。展示会への企業の出店意欲も高く、前回のブース出展は7社、今回は12社まで増加しています。
なお、2023年12月に開催された「にじさんじフェス 2023」のチケット売上は7億4,000万円。ANYCOLORはイベントを実施した2024年4月期3Q単体(2023年11月1日~2024年1月31日)にイベント売上として7億4,100万円を計上しています。
カバーの2024年3月期4Q単体(2024年1月1日~2024年3月31日)のライブ/イベント売上は51億1,500万円。ホロライブは、にじさんじとは比較にならないほどライブやイベントの収益貢献が大きいのが特徴です。
アメリカに初の海外拠点を設立
しかし、イベントは利益率が低いという弱点があります。大がかりなイベントがない場合、四半期のイベント費は2~7億円程度ですが、カバーは2024年3月期4Q単体で20億6,000万円のイベント費を計上しています。仮に19億円程度のイベント費が「ホロライブ5th Fes./EXPO2024」に投じられていると仮定すると、このライブイベントの粗利率は20%ほどしかないことになります。
しかし、4Qの粗利率は44.5%でした。これはイベントで物販の売上が伸びるため。VTuberのイベントに限らず、ミュージシャンのライブイベントでも同様のことが言えます。セールスミックスで利益率を引き上げているのです。
従って、VTuber事業全般にわたって収益性のカギを握っているのが物販。カバーとANYCOLORの直近通期の営業利益率を比較すると、カバー18.4%に対してANYCOLORは37.1%と圧倒的な差がついています。