本誌e-Sports Business.jpでは、eスポーツ領域で新しいビジネスを展開しようとするマーケターや新規事業担当の方に向けて、eスポーツビジネスの事例を発信しています。
今回は、eスポーツビジネスにおいてさまざまな事業に取り組んでいる「飲料メーカー」について、特にエナジードリンクメーカーを中心に、代表的な取組みを紹介します。
Red Bull
「レッドブル、翼を授ける。」のコピーで知られるエナジードリンクメーカーのRed Bullは、エクストリームスポーツやモータースポーツへの取り組みが有名ですが、eスポーツに対するアプローチも精力的です。
Red Bullは、プロゲーミングチーム「DeToNator」や「ZETA DIVISION」とスポンサーシップを締結し、その活動を全面的にサポートしているほか、『ストリートファイター』シリーズではお馴染みの「ウメハラ」選手など、選手個人へのサポートも積極的に行っています。
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また、自社主催のeスポーツ大会「Red Bull 5G」を2012年にスタート。5つのゲームジャンルで行われ、各ジャンルのオンライン予選と東西地区代表決定戦を通じて、最終的に東西2チームが対戦する大会で、これまで数回にわたって開催されています。
2023年には『VALORANT』の完全招待制トーナメント大会「Red Bull Home Ground」が日本初上陸しました。両国国技館を舞台に世界のトップチームが集まった本大会では、3日間を通じ約1万3,000人が来場、全世界で約1,300万人の視聴者数を記録するなど、国内外の『VALORANT』ファンから注目を集めました。
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さらに、Red Bullが2020年に東京・中野にオープンしたゲームスタジオ「Red Bull Gaming Sphere Tokyo」は、単なるレンタルスペースではなく、ゲームを中心とした新たなコンテンツやコミュニティ、カルチャーが生まれる場所として位置づけられています。
モンスターエナジー
同じくエナジードリンクブランドであるモンスターエナジーは、Red Bullと比較しても安く大容量であることなどから、特に若者に人気を博しているといえます。そんなモンスターエナジーは、スポンサーシップからコミュニティエンゲージメント、そして独自のコンテンツ制作に至るまで、多岐にわたるeスポーツ施策を展開しています。
同ブランドは、「ZETA DIVISION」を2023年10月まで協賛していたほか、2024年6月からはプロゲーミングチーム「RIDDLE」のストリーマー部門とスポンサーシップを締結しています。
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RIDDLEは、ストリーマーのボドカさんが2016年に発足し、2020年にプロチーム化したゲーミングチームで、『フォートナイト』部門、『Apex Legends』部門、『VALORANT』部門、ストリーマー部門を擁する人気チーム。日本のゲーム/eスポーツシーンを語るうえでは欠かせないストリーマー領域においてサポートすることで、特にeスポーツファン層の大部分を占める若者との繋がりを強化しようというねらいが見えます。
ZONe Energy
エナジードリンクとしては後発でありながら、国内で存在感を増しているサントリーの「ZONe Energy」も、eスポーツ関連の取り組みに注力するブランドのひとつです。
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代表的な取組みとしては、プロゲーミングチーム「Crazy Raccoon」の大規模オフラインイベント「CR FES 2024」への協賛が挙げられます。このイベントは、プロ選手、ストリーマーともに若年層に絶大な人気を誇るプロゲーミングチーム「Crazy Raccoon」のメンバーが出演するもの。オリジナルのコラボグッズをはじめ、大規模なキャンペーンを展開しました。
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アサヒグループ
さて、eスポーツ領域でのビジネスを強化するのはエナジードリンクメーカーだけではありません。国内の大手飲料メーカーの多くがeスポーツシーンのサポートや連携を行ってきましたが、直近で注目の取り組みを行っているのはアサヒグループでしょう。
アサヒビールは、『VALORANT』のインターナショナルリーグ「VALORANT Champions Tour Pacific 2024(VCT Pacific)」にビールカテゴリーとしては世界初のオフィシャルパートナーとして協賛。さまざまな趣味を楽しみながらアルコール飲料を楽しんでもらうことを押し出した低アルコールビール「アサヒスーパードライ ドライクリスタル」を大会オフィシャルビールとして提供するなど、若者をターゲットとした施策となりました。
また、コナミグループが2024年2月にオープンしたeスポーツカフェ&バー「STROPSe」では、アサヒビールの子会社であるスマドリ社が開発したオリジナルドリンクやフードが提供されており、これも特にZ世代やミレニアム世代に特化したマーケティングを行うスマドリ社ならではの施策といえます。