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2021年8月24日から26日にかけて、国内最大のゲームカンファレンス「CEDEC2021」がオンラインで開催されました。本稿では、コミックやアニメ、すでに発売されているゲームソフトなど、何らかの原作を持つ(=キャラクターIP)ソーシャルゲームにおける商品(主にガチャから排出されるキャラクター)の商品力の定量化を図るセッション「『それ、どれだけ売れるの?』キャラクターIPソシャゲにおけるIP商品力の定量化と取り組み」のレポートをお届けします。
最初に登壇したのは、セガ 第4開発2部 マネージャー/運営リーダーの川上普史氏です。一般的に、ソーシャルゲームにおける売り上げ(≒ガチャによる収益)は、キャラクターのパラメータやスキルなどの遊びの部分に関わる設定や、イラスト、3Dモデルのデキのよさ、キャラの魅力をより一層引き立てるシナリオやボイスなどで決まります。本講演は「ただし、何らかのIPを原作とするソーシャルゲームであれば、それらよりも原作が持つ人気や知名度の方が売り上げに大きく影響する」と仮定されました。
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まずは、新しく出すIP商品(≒ガチャで新たに登場するキャラクター)それぞれに期待される商品力を、原作での人気や知名度、グッズの売り上げ、その作品に深い知見を持つ者へのヒアリングなどを元に、販売中の商品(≒すでに実装されているキャラ)とも比較しながらはじき出します。
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ところが、いざフタを開けてみると販売結果には大きなバラつきが出てしまいました。売り上げは予測の160%~50%の間で乱高下し、ビジネスとして安定した見通しが立てられない……という結果になってしまいました。
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そうとなれば、次に考えるべきことは「どのように考えれば精度の高い予測ができるのか、売り上げリスクを低減できるのか」になります。そのために、以下の2つの要件を設定しました。
要件1:個々の商品について信頼できるIP商品力(売り上げを作る力)を把握し、それを定量的な指数にすること
要件2:その指数が商品の「人気」ではなく「売り上げ」を反映するものになっていて、売り上げリスクの軽減に役立つものになっていること
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ここからは、セガ 戦略支援部 ビジネス&データ分析1課 課長代行 / データアナリストスペシャリストの柴宮朋和氏が登壇しました。IP商品力は、どのようにすれば定量化できるでしょうか。
まず、ソーシャルゲームにおける商品(≒キャラクター)は、ガチャで入手するのが一般的です。つまり、ある商品の売り上げを考える際は、それを購入した集団を形成するユーザー1人1人の個人差、個人レベルの売り上げデータを算出しなければなりません。
柴宮氏は、そのためには解決するべき2つの課題があると続けます。ひとつめは、個人の売り上げデータを見る際の観測メカニズム上の問題です。ユーザー個人の売り上げ額は、そのユーザーが商品に期待する利得が支払ってもよいと考えるコストを上回る場合にのみ観測されます。期待される利得がコストに見合わないと考えれば、当然支払いは行われません。このとき、後者のユーザーが支払ったコストをただ0とだけ捉えると、バイアスがかかってしまうと柴宮氏は指摘します。
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課題のふたつめは、ユーザーが支払う額の大きさを左右する、IPの商品力以外の要因です。ユーザーは1人1人ゲームに支払える額が異なりますが、その理由は単純に財力の差であることもあれば、「もう少しすれば"フェス"があるから」という時期的な問題であることもあり、財力はあれど何らかの理由で意欲が減退していたので支払わなかった……など多岐にわたります。各ユーザーに対し、これらの事情をつぶさに斟酌するのは困難であるといえるでしょう。
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そこで、ユーザー購買力を視覚化するためにRFM分析を用いました。RFM分析は、Recentry(一番最近購入したのはいつか)、Frequency(どのくらいの頻度で購入するか)、Monetary(支払う額はどの程度か)という3つの指標で顧客を分類する手法です。この指標を用いて、商品に対するあるユーザーの購買率(支払いの有無)と支払い額を求められる係数を推定し、2つを合わせて「IP商品力」を指数化しました。
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IP商品力指数が求められたら、次は評価です。指数の妥当性の評価は「その指数を使って、あるIP商品の売り上げを予測できるか」、「その指数は人間が予測できるか(人間の感覚とズレはないか)」の2つで行われました。
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最後にふたたび登壇した川上氏は、前述の評価をクリアしたIP商品力指数を実際に用いてみたところ、それまでは売り上げの予測と結果に50%以上見られたバラつきを7割削減することに成功。売り上げリスクを大幅に低減できた…とセッションをまとめました。
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