スクウェア・エニックス2022年3月期の業績が過去最高を更新しました。
売上高は前期比9.8%増の3,652億7,500万円、営業利益は同25.5%増の592億6,100万円。営業利益率は16.2%となりました。
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※決算説明会より
スクウェア・エニックスは、2021年3月期も業績は好調でした。売上高は前期比27.6%増、営業利益は44.2%増。営業利益率は14.2%で2020年3月期を1.6ポイント上回っていました。それを大幅に更新した2022年3月期は超絶決算と呼ぶにふさわしい内容です。
2023年3月期の業績にも期待ができますが、現段階で通期の業績予想は出していません。理由は子会社CRYSTAL DYNAMICSなどを、スウェーデンのEmbracer Group ABに売却するため。株式譲渡実行日は2022年9月をめどとしており、この売却が連結業績に与える影響を精査しています。スクウェア・エニックスはこのM&Aで、「TOMB RAIDER」シリーズ、「Deus Ex」シリーズ、「Thief」シリーズ、「Legacy of Kain」シリーズ等のIPを手放すことになります。
「TOMB RAIDER」シリーズといえば、2009年4月に英Eidosを122億円で買収して取得した主力タイトルの1つです。しかし、この買収は決して良好なものとは言えませんでした。CRYSTAL DYNAMICSの売却は抜本的な事業整理と見ることができます。
大型買収後に120億円の減損損失
Eidosは2008年6月期に大赤字を計上するなど、「TOMB RAIDER」というヒットタイトルを持ちながら、業績不振が目立っていました。スクウェア・エニックスがEidosを子会社化することで欧米に開発拠点を作れることは魅力的です。2003年4月に代表取締役社長に就任した和田洋一元CEOは、就任当初から海外展開の強化を掲げており、買収によってグローバル構想実現への足掛かりをつかむことができました。和田氏が会社に華々しい足跡を残そうとする野心が感じられます。
Eidosが持つ国内未発売のタイトルを買収直後に販売する計画を立てるなど、シナジー効果創出に向けて意欲的な活動を開始しました。しかし、買収後の業績は振るいませんでした。
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※決算短信より筆者作成(営業利益率の目盛りは右軸)
買収直後の2010年3月期の売上高は前期比41.7%増の1,922億5,700万円、営業利益は同130.0%増の282億3,500万円。営業利益率は前期の9.0%から14.7%まで上昇しました。しかし、2011年3月期の売上高は前期比34.8%減の1,252億7,100万円、営業利益は同74.1%減の73億2,500万円と失速。営業利益率は5.8%と、買収前の水準まで落としました。
スクウェア・エニックスは2011年3月期に120億4,300万円の純損失(前年同期は95億900万円の純利益)を計上しています。
純損失の多くはEidos買収によって生じたのれんの減損損失です。