
iOS14.5のリリースをはじめとするプライバシー保護の流れは、今に始まったことではありません。欧州では2018年から「EU 一般データ保護規則」(GDPR)の施行によって、ユーザーデータの取得が非常に困難になっています。こうした法整備とユーザー保護については、今後も加速していく一方です。そこで連載の最終回となる本稿では、プライバシー保護の時代において、ゲームアプリマーケターがビジネスを強化し、成功を得るために必要な10のポイントをご紹介します。
過去の連載はこちら!マーケティング手法を見直す
1.KPIを見直す
まず何からすれば良いかというと、マーケティングの成果を計測するために設定していたKPIの見直しから始めることをおすすめします。ユーザーレベルの計測に頼ることができない今こそ、KPIを見直す絶好のタイミングです。インストールや再インストール当たりの総広告コストといった評価基準や、一部で限定機能として提供されている機械学習に基づく予測機能などの新技術の活用を検討すべきでしょう。
2.成果を文脈(コンテクスト)でとらえる
iOSではターゲティング広告は過去のものとなり、コンテクスト広告が主流になりつつあります。多くのマーケターにとって実践経験の少ないコンテクスト広告で成果を上げるには、デモグラフィックターゲットを特定し、どこでどのように繋がるかを吟味する必要があります。
手始めにぜひ取り組んでいただきたいのが、過去のユーザーレベルのインストールデータを検討し、インストール数に寄与したサブパブリッシャーを特定することです。そしてオーディエンスデータからノイズを排除しながらクリエイティブを調整し、オーディエンスとの関連性を極限まで高める作業も成功には不可欠でしょう。
3.トラフィックを多様化する
そして、他のトラフィックソースに目を向けることも忘れてはなりません。ATT実装後、大きな環境変化が起こったことを踏まえると、ユーザー獲得の場の多様化が予測できます。これまでユーザー獲得の大部分を占めていたはずのiOSは、ATT実装によりすでに打撃を受けています。Android、Amazon、PC、コンソール、そしてOculusなど、他のプラットフォームによるトラフィックも検討した方が賢明でしょう。
4.クロスプロモーションを展開する
複数タイトルを展開中なら、特にハイパーカジュアルゲームで有効な手法であるクロスプロモーションプランを立てるのも1つの手です。プレイヤーが自社のエコシステムにとどまるようファネルを最適化し、LTVを評価すれば、今後のユーザー獲得増に結び付けることができるでしょう。
ビジネスモデルを転換する
5.サブスクリプションベースのモデルを検討する
iOSでIAP(アプリ内課金)が減少傾向にある主な理由は、ストアの競争激化に伴い、各社ともユーザー獲得が難化したことで、デイリーアクティブユーザー数が落ち込んだことにあります。ゲーム制作会社は減少したプレイヤーを取り戻すべく、IAPへの支出か予算のどちらかを増やすことに躍起になっています。今後はApple Arcadeなどサブスクリプションベースのモデルが勢いを増すのではないでしょうか。

6.日本以外の市場も開拓する
日本国内で成長機会を望めないのであれば、別の市場に目を向けることもおすすめします。
たとえばユーザーが個人情報保護に敏感なアメリカのような市場では、ユーザーが個人情報の開示に慎重になることを考えるとATTの影響を受けやすいといえます。ユーザーが見えにくいことで、アプリビジネスはユーザーのインサイトを得にくくなるだけでなく、その獲得も容易ではなくなります。そうなれば、ATTの影響を受けやすい国の市場は早晩飽和状態になるでしょう。
一方、ゲームアプリのCPIやCPAは相対的に低く、ATTオプトイン率が高い傾向にあるベトナムをはじめ、インド、ブラジル、インドネシア、東欧はいずれも急角度で成長を続けるマーケットです。こうした国々のLTVは米国より格段に低いのですが、CPIも低く競争率も高くありません。長期的な視野に立ち、先行投資という文脈でこうした国別の傾向を把握し、部分的に落ち込んだビジネスを復調させる手段として生かすべきでしょう。
ATTの特性を理解する
7.ATTの同意率を継続的に高める
ATTのオプトイン率をKPIの1つとして活用することで、同意率を高めるための対策が立てやすくなるでしょう。ポップアップ表示前と表示後の反応を見るA/BテストでATTの実質的な影響を測ることもできるはずです。ほんの1%の上昇でも、多数のプレイヤーが解約とリエンゲージを繰り返した結果かもしれません。
8.ユーザーとのタッチポイントを増やす
ゲーム制作会社が利用できるIDFA(広告識別子)の数が減る中、プレイヤーとの関係強化が一層重要になっています。プッシュ通知、メール、SMS、Facebook通知、WhatsAppの通知、ボット(メッセンジャー、Apple、Google)などにはすべて、固有のユーザー定着プロセスの手法があるはずです。
広告を表示できない場合に、どのターゲットユーザーを獲得し、何をいつ送るかといった、堅実で組織的なクロスチャネル計画を立てることが重要です。
ゲームづくりを根本的に変える
9.新たなジャンルに挑戦する
これだけ多くのゲームが世に溢れている時代とはいえ、自分に合ったゲームが見つかっていないユーザーもいるはずです。ゲームマーケターは、改めて既存のジャンルに囚われないゲーム作りに挑戦すべきです。競争が激化してCPIが制御不能になった過飽和市場で勝負するより、ブルーオーシャンのニュージャンルで勝負する方が勝ち筋を見つけやすいでしょう。

10.クリエイティブ第一主義を貫く
プライバシー保護の傾向が強まるほど、最適化を図るうえでクリエイティブの重要度はさらに高まるでしょう。iOS 15の仕様変更など保護強化の流れが続くなかで、文脈化、セグメント化された広告からランディングページまで、UIやUXをはじめとする一貫したユーザー体験を提供するクリエイティブがますます重要になってきます。
まとめ
こうして10のポイントにまとめてみると、市場環境が変わって法規制が厳しくなったり、新たなテクノロジーが生まれたりしても、マーケターが行うべき基本的な行動は変わりません。テクノロジーやアルゴリズムなど目先のテクニックに依存しすぎず、常に自社のゲームが何を目的に、誰を狙ってどのような施策を展開するのか試行錯誤し続ける姿勢が必要なのではないでしょうか。
AppsFlyerについて
AppsFlyer (https://www.appsflyer.com/ja)は、革新的なプライバシー保護の計測、分析、エンゲージメント技術で、マーケティング担当者が自社ビジネスや顧客にとって的確な判断を下せる環境を構築する。ブランドが優れた体験を顧客に提供しながらプライバシー保護の向上を実現するという方針のもと、12,000以上のブランドと10,000以上のパートナーが、より良く、より有意義な顧客関係を構築できるようサポートしている。