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2023年8月23日(水)~25日(金) にかけて、コンピュータエンターテインメント開発者を対象とした国内最大規模のカンファレンス「コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス 2023(CEDEC2023)」が開催されました。本稿では、サイバーエージェントグループ アプリボットによる講演「FINAL FANTASY VII EVER CRISIS - モバイル開発におけるハイクオリティ3D演出」のレポートをお届けします。
リアルタイム描画と映像を違和感なくなじませて召喚獣を演出
スクウェア・エニックスとサイバーエージェントの協業開発タイトルとなるスマートフォンゲーム『FINAL FANTASY VII EVER CRISIS(以下『FFVII EC』)』は2023年9月7日に全世界で同時リリース予定です。講演には、サイバーエージェントから矢野春樹氏、アプリボットから邑上貴洋氏、川原武将氏、香取政人氏の計4名が登壇しました。
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『FF』シリーズを象徴する要素のひとつである「召喚獣」ですが、本作のバトルにおける召喚獣の召喚演出は、リアルタイム描画に映像を組み込むことでクオリティアップと負荷軽減の両方を実現しているとのこと。
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映像はベースをUnityで作成し、AftetEffectでトランジションやエフェクトの追加し、カラーグレーディングなどを行って完成。それをリアルタイム描画に合成し、再びUnityで色味の最終調整を行うことでリアルタイム描画と映像をなじませています。
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バトルでは、キャラごとに専用モーションが用意されているリミットブレイク(いわゆるスキル/必殺技)もすべてリアルタイムで描画。スキル発動者以外の仲間キャラやターゲット以外の敵キャラを一時的に非表示にすることで負荷を軽減し、余裕が生まれた分エフェクトやポストフィルターのクオリティを上げています。
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『FFVII EC』にも使用されたエフェクト用多機能シェーダーを公開中
次に、リアルタイムVFXの大部分に使用されているエフェクト用汎用多機能シェーダー「Nova Shader」が紹介されました。
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これはアプリボットが『ブレイドエクスロード』のために開発したシェーダーをより洗練させたツールで、GitHubで公開されているOSS(オープンソースソフトウェア)なのでライセンス表記をすれば誰でも使用できます。
機能は「UVスクロール・回転」、「フリップブック/ブレンディング」、「乗算色」、「フローマップ」、「エミッション」、「ディゾルブ」、「フェード」、「ディストーション」、「頂点変形」「視差マップ」のほか、PBR(物理ベースレンダリング)ライティングの影響を切り替えられる「Unlit版 / lit版」などを備えており、Assetsフォルダ内のSamplesフォルダを参照すれば、作例サンプルを確認できます。
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『FFVII EC』の知見が活かされたアプリボットリグ
アプリボットは非営利目的にかぎり利用できるMaya用フリーリグ「アプリボットリグ」を2023年1月から公開していますが、本ツールは『FFVII EC』のリグを参考に制作されました。
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内臓された半自動リグ生成ツール「General Rig」によりパーツ単位でリギングを行い、それらをあとで接続する手法を採用してるため、短時間でのリグ生成が可能となっています。さらに、リグ生成後にコントローラーの色や大きさ、形状を編集できるので、キャラの大きさや体型に合わせることができるカスタマイズ性も備えています。
次に話題は『FFVII EC』に登場する敵のポリゴン数に。同作ではモンスターがSサイズ/Mサイズ/Lサイズのいずれかに分類されており、それぞれ10000tris以内/15000tris以内/50000tris以内というポリゴン数の上限が設けられています。
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また、初代PlayStationでリリースされた『FFVII』を彷彿とさせるルックをしたクエストキャラクターは上限を5000tris以内に設定。体格は7種類あるものの、骨構造を共有しているので全体格でモーションを流用できます。
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そのほか、チョコボや一部のメカ、動物などには独自のモーションを用意しており、クエストキャラだけでも400以上用意されているそうです、