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イオングループでゲームセンター運営を行うイオンファンタジーが、コロナ禍から回復しつつあります。
2024年2月期上半期(2023年3月1日~2023年8月31日)の売上高は前年同期間比16.4%増の408億4,000万円、営業利益はおよそ7倍となる20億2,400万円に跳ね上がりました。営業利益率は5.0%。2期連続の営業赤字からは立ち直りましたが、コロナ禍を迎える前の営業利益率は6~8%程度ありました。
完全復活しているとは言えず、中でも苦戦しているのが中国事業です。
カプセルトイとクレーンゲームで勝負をかける
イオンファンタジーは2024年2月期(2023年3月1日~2024年2月29日)の売上高を前期比18.6%増の862億円、営業利益を4.7倍の40億円と予想しています。上半期時点での売上高の進捗率は47.3%。
なお、2023年2月期(前期)は上半期の時点で通期の売上高を789億円と予想しており、進捗率は44.4%でした。そして、業績予想の下方修正を経て、2023年2月期の最終的な着地は726億9,000万円(当初の予想比で7.9%減)。2024年2月期は売上予想を達成するかどうか、ギリギリのラインにいると言えるでしょう。
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※決算短信より
ただし、2桁増収で勢いがあるのは確かです。売上高を伸ばしている要因は大きく2つあります。1つは国内で小型店の出店を強化していること。もう1つは海外事業が回復していることです。
イオンファンタジーは、カプセルトイ専門店「TOYS SPOT PALO」と、クレーンゲームなどの「PRIZE SPOT PALO」の出店を強化しています。「TOYS SPOT PALO」は2022年の153店舗から、2023年は200店舗を大幅に超える予定です。上半期だけで49店舗を出店しました。
「PRIZE SPOT PALO」は29店舗から60店舗程度の拡大を見込んでいます。
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※決算説明資料より
同社が得意とするメダルゲームは、設備投資が大きくなりがちで、人件費もかかります。一方でカプセルトイ専門店は人件費がほとんどかからず、家賃や電気代が主な固定費。運用にも手間がかかりません。カプセルトイの原価率は70%と割高ですが、イオンファンタジーがカプセルトイ専門店を積極的に出店する前の2019年2月期の原価率は86.5%。2024年2月期上半期は87.1%と、ほとんど変化していません。
アニメーションやキャラクターがメインストリームとなった日本において、設備投資や人件費を抑えたカプセルトイまたはクレーンゲーム専門店を出店する戦略は優れていると言えるでしょう。
今後、国内のサービス業において最も深刻な経営課題となるのが、人件費の高騰と人材不足になるのは間違いありません。マイナビによると、アルバイトの平均時給は2020年が1,110円でしたが、2023年は1,192円。三大都市圏で見ると、1,151円から1,233円まで7.1%上昇しました。
都内のゲームセンターは1,300円~1,500円程度で募集をかけているのが一般的です。いかに無人化を進めるかが、アミューズメント施設全般の中期的な課題となります。その点、イオンファンタジーは課題解決に向けた一手を打っていると見ることができます。
巨額の減損損失計上で償却負担は減ったはずだが黒字化できず
イオンファンタジーが大幅な増収を成し遂げている2つ目の要因が海外事業の回復。中国事業2024年2月期上半期の売上高は前年同期間比45.8%増の38億900万円、タイやベトナムなどアセアンエリアの売上高の合計は30.8%増の53億4,300万円となりました。
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※決算説明資料より
イオンファンタジーの業績において一番のポイントとなるのが、中国事業。確かに売上高は1.5倍に伸びていますが、未だに営業利益が出ていません。コロナ禍を迎える前の2019年2月期上半期の中国事業の売上高は50億7,000万円、営業利益は3億3,700万円(営業利益率6.6%)でした。