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2023年12月25日、金融サービスを展開するSBIホールディングスが、gumiの普通株を最大で300万株(7.58%)取得すると発表しました。
SBIは2023年10月末の時点で22.46%を保有する筆頭株主。今回の追加取得によって、最大で30%超を保有することになります。
分かりづらいのが、追加取得したその目的。支配力を高めることを狙っているのであれば、議決権の1/3超(33.34%)を取得するべきでしょう。株主総会の決議を否決できる拒否権を有するため、gumiの経営に対して強い影響力を持つことができます。
あえて距離をとったSBIの追加取得の狙いはどこにあったのでしょうか?
暗号通過取引所ビットポイントを完全子会社化したSBI
まずは、SBIがgumiの筆頭株主になった背景から見ていきましょう。
2022年12月22日、SBIはgumiと資本業務提携契約を締結しました。SBIがgumiの第三者割当増資を引き受け、880万株(22.46%)を取得したのです。この増資により、gumiは62億3,000万円を調達しました。なお増資前のSBIの持株比率はゼロ。2社は新たな関係を構築したのです。
この資本業務提携の目的は明確。ブロックチェーンゲームのエコシステムの形成です。gumiはブロックチェーンゲームの開発に着手しており、『ファントム オブ キル』や『Brave Frontier』のIPを活用し、獲得したトークンを資産として保有できる機能の開発などを進めていました。
SBIはトークンを売買する取引所を担います。SBIは2022年5月12日に暗号資産取引所「BITPOINT(ビットポイント)」を運営するビットポイントジャパンの株式51.0%を取得して連結子会社化。2023年2月14日には全株を取得して完全子会社化しました。
ビットポイントや、SBIが独自に立ち上げた暗号通過取引所SBI VCトレードは、取り扱う通貨の種類が少ないという弱点がありました。そこで、売買するトークンの幅を広げて、利用者数を拡大。手数料収入を増やす狙いがあったのです。
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※gumi「ファイナンス補足説明資料」より
ビットポイントは、KLabのWeb3関連事業を管轄する子会社BLOCKSMITH&Co.とMint Townが共同開発したブロックチェーンゲーム『キャプテン翼 -RIVALS-』のTSUBASAガバナンストークン($TSUGT)を取り扱っています。日本の暗号通過取引所においてTSUGTが上場したのは初めてで、SBIがブロックチェーンゲームに強い関心を持っている様子がわかります。
Mint Townの代表取締役はgumiの創業者・國光宏尚氏。國光氏が、ブロックチェーンのエコシステムの形成に一役買っているのも間違いありません。
買い増しによって特別損失の計上を回避した
次にSBIがgumiの株式を買い付けた状況について見ていきます。
SBIは第三者割当増資時に、gumiの株式を1株708円で取得しました。SBIが追加取得をすると発表したのが2023年12月25日の取引終了後。この日のgumi株の終値は356円。安値は355円でした。取得額の1/2ほどにまで下落しています。
上場株式の株価が50%相当額を下回り、回復の見込みがないときには減損処理を行うというルールがあります。減損処理とは、持株の資産価値を下げて回収が見込める金額まで減価する会計処理のこと。資産価値100だった株式が30まで下がった場合、70を特別損失として計上しなければなりません。SBIはgumiに60億円ほど出資していました。仮に30億円まで下がったのであれば、30億円の損失をその処理を行った決算期に計上する必要があります。
SBIはgumi株が50%を下回る直前に追加取得を発表しています。そのおかげで、2023年12月27日に株価は一時510円をつけました。仮に株価が反応せず、355円前後で推移していたとしても、SBIがその価格で株式を取得すれば平均取得額が下がるため、減損処理を回避または先送りすることができます。
SBIはgumiの株式の取得期間を2024年3月29日に設定しています。SBIは3月決算の会社。買い付け期間の最終日が期末を迎える最終取引日なのです。また、追加の買付を発表したタイミングが株式の取得額の50%を下回るギリギリの水準だったこと、取得割合が1/3を超えていないことも考慮すると、SBIはナンピン買いをしたと見て間違いないでしょう。
ナンピン買いとは、保有する銘柄の株価が下がったときに買い増しをして平均購入単価を下げる投資手法の一つです。
『アスタータタリクス』は将来的に減損処理をする?
SBIがナンピン買いをしたということは、gumiの株価がしばらく上がらないと見ていることになります。それはなぜでしょうか?