バンク・オブ・イノベーションは4Q赤字で着地、『メメントモリ』ヒットの恩恵から抜け出す時期は【ゲーム企業の決算を読む】 | GameBusiness.jp

バンク・オブ・イノベーションは4Q赤字で着地、『メメントモリ』ヒットの恩恵から抜け出す時期は【ゲーム企業の決算を読む】

広告宣伝費は大きく変わっていないものの、減収基調が鮮明になっています。

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バンク・オブ・イノベーションは4Q赤字で着地、『メメントモリ』ヒットの恩恵から抜け出す時期は【ゲーム企業の決算を読む】
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『メメントモリ』のバンク・オブ・イノベーションは、2024年9月期4Q単体(2024年7月1日~2024年9月30日)が営業赤字となりました。

同期間の売上高は前四半期比4.3%減の28億3,700万円。300万円の営業赤字(前四半期は9,500万円の営業利益)でした。2023年9月期4Q(2023年7月1日~2023年9月30日)以降は安定収益化フェーズと位置づけており、四半期単体で赤字に陥ったのは今回が初めて。広告宣伝費は大きく変わっていないものの、減収基調が鮮明になっています。

2023年6月に『幻獣契約クリプトラクト』と『ミトラスフィア -MITRASPHERE-』のサービスを終了しており、更なる経費削減に努めることになります。

新作大型RPGの具体的な進捗に関するアナウンスはなし…

2024年9月期累計(2023年10月1日~2024年9月30日)の売上高は前期比36.2%減の136億1,500万円、営業利益は同72.9%減の13億2,900万円でした。バンク・オブ・イノベーションは前期が締まる直前の2024年9月24日に通期業績予想を発表。売上高を136億5,000万円、営業利益を13億4,000万円としていました。実績はそれも下回っています。

『メメントモリ』のリリースは2022年10月18日。このタイトルの大ヒットでバンク・オブ・イノベーションは2023年9月期1Q単体(2022年10月1日~2022年12月31日)の売上高が、前四半期の12倍となる83億6,800万円まで押し上げられました。28億3,300万円の営業利益(前四半期は3億3,400万円の営業損失)を出して黒字転換を果たし、四半期単体の営業利益率は33.9%にものぼりました。

しかし、その反動も大きく、リリースから1年が経過した2024年9月期1Q(2024年10月1日~2024年12月31日)の売上高は41億7,700万円。前年同期間比で5割もの減収となりました。

決算説明資料より筆者作成

『メメントモリ』の周年記念イベントが発生する1Qは売上が膨らむものの、後半にかけて減衰しています。そしてついにリリースしてから初めて四半期単体での赤字となりました。

バンク・オブ・イノベーションは2023年9月期3Q以降を安定収益化フェーズと位置づけています。現在、「新作大型RPG」2タイトルのプロジェクトを進行中。業績を安定させて新作をリリースし、『メメントモリ』を上回る収益性を確保するという絵を描いています。

新作のリリース時期や進捗状況については開示されておらず、今回の決算発表でもそこには言及しませんでした。足元の業績が悪化すれば中期的に株価にも悪影響を及ぼす可能性があります。

四半期単体の損益分岐ラインは18.5億円前後か

2024年9月期累計のプラットフォーム手数料は40億7,200万円。売上高に占める割合は29.9%。今期は25%程度まで下がる見込みとしています。広告宣伝費は前期46億9,400万円で、対売上比率は34.5%でした。これを30%まで下げます。

更に開発・運営などに必要な経費は35億1,400万円で、この固定費も33億円に抑えます。固定費を四半期ごとに案分し、プラットフォーム手数料や広告宣伝費の比率を経費に入れると、四半期単体で18億5,000万円が黒字ギリギリとなる試算。広告費削減による影響でどの程度の減収になるのかが命運を分けると言えます。

『メメントモリ』は減衰スピードが極めて速く、インターネット上の検索需要を分析するGoogleトレンドによると、2024年11月10日~16日までの検索ボリュームは全盛期のわずか1割。2024年9月期4Qの売上高に対する広告費は41.5%で、前四半期の34.2%と比較すると7.3ポイントも上がっています。それにも関わらず、前四半期比で減収でした。

■「メメントモリ」の検索需要の変化

Googleトレンドより独自に調査

自社株買いは上限5億円に到達せず

経費削減を進めているため、新作に関する具体的な情報は出しづらいという背景があるのかもしれません。しかし、足元では情報開示が生命線になっているように見えます。

バンク・オブ・イノベーションは開発中の「新作大型RPG」のような爆発型タイトルは、リリースから30日間で全世界100億円~200億円の課金高であり、月40億円以上の規模を1年以上推移させることを目指して開発しているといいます。

『メメントモリ』は30日間で課金高が55億円、月の課金高が10億円で1年以上推移しました。新作はこれを大きく上回る目標を掲げているのです。バンク・オブ・イノベーションは『メメントモリ』をリリースする直前の2021年9月期に、開発費即時費用処理として6.3億円を計上しています。新作の開発費は同様の規模、もしくはそれ以上になるのではないでしょうか。

実はバンク・オブ・イノベーションの株価は高水準が続いています。11月14日時点の時価総額は206億円、PBRは4.6倍。colyは時価総額が74.8億円、PBRは1.5倍。ワンダープラネットの時価総額は20.2億円、PBRが2.7倍。バンク・オブ・イノベーションは通期で安定的な利益を出しているためだとも見ることができますが、主だった好材料に欠けている印象がある割には高値で推移しています。

事実、同社は2024年3月に5億円を上限に自社株買いを決議し、5月におよそ5,200万円分を取得したものの、それ以降は想定していた株価を超える水準で推移したことから上限に至らずに買取期間が終了を迎えています。

株価は経営陣の予想を上回って推移していた様子が分かります。一時はセガからの訴訟を受けて急落したものの、その後持ちなおしました。

仮に新型タイトルのリリースが好材料だと判断されているのであれば、小出しにでも情報を出すべきでしょう。すでに『メメントモリ』大ヒットの恩恵から抜け出すタイミングを迎えているように見えます。今期は新型タイトルに関する情報がどれだけ出てくるのかに注目が集まるでしょう。

《不破聡》

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