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ゲームセンターを運営するGENDAが2023年6月23日に上場承認を受け、7月28日にグロース市場に新規上場します。
2020年にセガグループからセガ エンタテインメントを譲受。その後、宝島やスガイディノスのゲームセンター事業の買収などを行いました。合弁会社を通して中国のアミューズメントマシンレンタル事業や、アメリカのエンターテイメント施設の運営にも乗り出しており、巧みな資本政策でシェアの獲得や事業の拡大を行っています。
GENDAはイオンのゲームセンター事業を行うイオンファンタジーの元社長・片岡尚氏が代表取締役会長、エリート集団を擁するゴールドマン・サックス証券において当時最年少としてマネージングディレクターに就任した経験がある申真衣氏が代表取締役社長を務めています。ゲームセンター運営のスペシャリストと、資本政策のプロフェッショナルがタッグを組んでいる会社。”オワコン”とも言われたゲームセンター業界において、GENDAが台風の目となるのは間違いないでしょう。
出資先の経営陣が自発的に事業推進が行える異例の投資ファンド
GENDAは投資ファンドのミダスキャピタルの出資先でもあります。ミダスキャピタルはエアトリの創業者・吉村英毅氏が中心となって設立した会社で、2019年12月に上場したBuySell Technologies、2022年6月に上場したAViCにも出資をしています。
投資ファンドは金融機関や投資家などから資金を募ってファンドを立ち上げるのが普通です。しかし、この投資ファンドは原則的にミダスキャピタルのメンバーが出資をするという変わった性格を持っています。
ファンドの運用期限という概念がなく、中長期的なリターンを追求できるというメリットがあります。議決権総数の30~50%程度の保有を基本方針としているため、上場前のGENDAの出資比率も56.65%に抑えられています。
GENDAの株式は、会長の片岡氏が16.85%、社長の申真衣氏が5.66%を保有しており、上場時の想定価格1,740円で計算すると、片岡氏が個人名義で保有する株式の資産価値は102億4,800万円、申真衣氏は34億4,300万円となります。
投資ファンドが出資する案件の場合、ファンドが大半の株式を保有した上で、所属するメンバーが取締役として出資先の経営に参画するのが一般的。ミダスキャピタルの出資を受けるGENDAは経営者の独立性や、企業価値向上を目指すための強いインセンティブ設計がされています。意欲的な企業活動をしてきた背景には、こういったミダスキャピタルの投資方針があるものと考えられます。
2022年からは映画館の運営にも乗り出す
GENDAは2019年6月に59%の出資比率で中国に連結子会社を設立。中国でのアミューズメントマシンレンタル事業を開始しました。同年7月にはラウンドワンとの共同出資でKiddleton, Incを設立し、アメリカでの子供向けアミューズメント施設運営を行う体制を整えます。この会社は2021年4月に子会社を通してNAMCO USA INC.からアミューズメント施設PAC-MAN ENTERTAINMENTを譲受し、リニューアルした上で運営を開始しました。
売上高を大きく伸張させるきっかけとなったのが、2020年セガ エンターテインメントの買収。10億円程度だった売上高は380億円まで膨らみます。
2021年10月にはダイナモアミューズメントと資本提携を行い、後に持分法適用関連会社にしました。ダイナモアミューズメントは映像を主軸として体感型シアターアトラクションの開発・販売などを行っています。
2022年8月にディノスシネマを設立。この会社は2022年10月に、北海道のアミューズメント施設運営会社スガイディノスから映画館事業を譲受しています。スガイディノスからはゲームセンター、ボウリング場も取得しました。
巨額の減損損失を計上して利益を出しやすく改革
2023年1月期の売上高は前期比20.9%増の460億9,100万円、経常利益は同1.8%増の40億1,100万円でした。売上高2割増は、宝島の買収、スガイディノスのゲームセンター・ボウリング場・映画館の取得によるところが大きいです。
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2024年1月期は目立ったM&Aがなく、売上高は前期比3.1%増の475億円、経常利益を同6.0%増の42億5,000万円と予想しています。
様々な施設を買収したとはいえ、現在も売上高は元セガ エンタテインメントのGENDA GiGO Entertainmentに大きく依存しています。