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2024年3月7日、サイバーエージェントのゲーム・エンターテイメント事業部主催による初めての技術カンファレンス 「CyberAgent Game Conference 2024」が開催され、30以上のセッションによって普段なかなか知ることのできない技術やノウハウが紹介されました。
今回はその中から人気アニメの世界をスマートフォンゲームで再現度高く、そしてドラマチックに表現するための工夫が語られたセッション「『呪術廻戦 ファントムパレード』ADV制作事例 ~会話シーンを『飽きさせない』画作り術~」の内容をレポートします。
固有と汎用を組み合わせたモーションで「魅力的なしぐさ」に
本セッションでは『呪術廻戦 ファントムパレード(以下、ファンパレ)』を手がけるサムザップより、アートディレクターの中山祐治氏と、Live2Dアニメーターの安部裕香氏が登壇。
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まずは安部氏から『ファンパレ』開発におけるADVパート制作フローの紹介へ。開発チームでは最初にシナリオ班がストーリーを作成し、そのストーリーに必要なLive2Dやシネマティックシーン、背景やSEなどのリソースを発注します。そして納品されたリソースをスクリプト班がUnityへと組み込む流れになっています。
フローの最後にはADVチーム全員でストーリーの読みやすさやテンポ、流れに違和感がないか、そして表現としてもっと工夫できる箇所はないかなどをチェックをする「確認会」が設定されており、必要に応じてさらなるブラッシュアップを加えることで高クオリティなADVパート制作を実現しているとのことです。
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ADVシーンで使用するLive2Dキャラクターにおいては、より魅力的なしぐさを表現できるよう、用途ごとに多種多様なモーションを作成し、判別しやすいよう種類番号を振って管理されています。涙やギャグ顔といった細かな表現にも対応できるように付け足し用のカスタムモーションも作成されており、スクリプト側でバリエーション豊かな設定ができるような仕組みを採用していることも紹介されました。
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キャラクターごとの微妙な性格の違いをLive2Dモーションに反映させるため、『ファンパレ』ではキャラクターをいくつかのタイプに分けて汎用モーションを作成。同じ動作でも「Pop」タイプに比べて「Cool」タイプは小さな動きに、反対に「Wild」タイプは大きな動きにすることで個性を表現しており、この汎用モーションに細かなタイミングなどの調整を加えることでキャラクターごとの違いを明確にしています。
加えて主人公・虎杖悠仁の「拳を合わせる」など印象的な動きは固有モーションとして実装しており、多数の固有モーションと汎用モーションを組み合わせることで「魅力的なしぐさ」を追求。そこに表情モーションを組み合わせることで、限りあるリソースでもシリアスからギャグまでさまざまな感情を表現しています。
また、Live2Dではリアルな会話を表現するため、セリフの母音や音声波形に応じて口の形が変化する仕組みを採用しています。口の形はキャラごとに細かく形状を調整してこだわっており、自然なADVパートを演出していることも紹介されました。
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リアルなライティングを実現したノーマルマップと、ADVを超える演出の追求
続いてスピーカーは中山氏へと交代し、『ファンパレ』で導入されている「ノーマルマップ」についての紹介に。
ADVパートにおいて「より先進的で臨場感ある画作り」を目指した『ファンパレ』では、Live2Dのキャラクターに背景の環境の光などの影響を受けさせることで、2D特有の平面感をなくすことができるのではないかと考え、3Dモデルで広く使われている「ノーマルマップ(法線マップ)」を採用しています。