
米調査会社のMolocoは、全世界のモバイルゲーム市場に関するレポート「Beyond Borders」を公開しました。同レポートは、全世界のマーケティング費用の71%がわずか10カ国に集中し、うち40%がアメリカのユーザーをターゲットにしているとしています。
モバイルゲームのマーケティングは安定を求める傾向にある
全世界のモバイルゲーム市場におけるUA(ユーザー獲得)の費用は、アメリカに40%、イギリスに6%、ドイツに5%、日本に4%が投じられており、この4カ国だけで全体の55%が集中しています。アメリカ、もしくはヨーロッパを拠点とするマーケターは特にこの傾向が強く、この2地域にかぎって見ると82%が北米市場に投入されています。
同レポートは、2025年のモバイルゲーム市場におけるUA費用は290億ドルになると試算しており、「マーケターが成功体験に基づいて特定の国や地域に焦点をしぼるのは自然なことである」としつつも、「その快適さから一歩抜け出すことで、さらなる成長を実現できるかもしれない」と指摘しています。
また、国や地域によってUAに注力ジャンルに異なる傾向が見られ、日本・韓国・台湾はUAの41%をRPGに投じているのに対し、アメリカとイギリスはマッチパズルやカジノゲームに50%以上を投資。ブラジル・インド・インドネシアではハイバーカジュアルへの投資がもっとも高く、14%となっています。
国や地域ごとの傾向・嗜好を知ることがチャンスにつながる
レポートはさらなる成長を遂げるために、国や地域ごとの特色を理解すること、IAP(アプリ内購入)の経験があるユーザー1人あたりの平均売上(ARPPU)にあらためて目を向けることが大切であると説いています。
たとえば、世界的にはUAによる支出の大きさとIAPによる収入の多寡には関連性があるように見えますが、韓国・日本・台湾においてはIAPがUAを大きく上回っています。このような傾向は国外のマーケターには障壁となる可能性がありますが、各地域ならではの嗜好を捉えておけば、市場拡大のチャンスにもなります。
また、さまざまな市場が持つ可能性を正しく理解するには、ゲームのジャンルによってARPPUが異なるのを認識しておくことも大切です。一例として、マッチパズルに代表されるカジュアルゲームは他のジャンルに比べてARPPUが低い傾向にあり、香港・日本・シンガポール・韓国・台湾を含む東アジア太平洋市場ではRPGやストラテジーの方が高い数値を示します。しかし、イスラエル・ノルウェー、スイス、アメリカなどでは、マッチパズルのARPPUも比較的高い数値となっています。
市場をグローバルに拡大させるなら、マーケターは、成長の可能性、ユーザーの価値、ローカライゼーションのニーズなど、さまざまな視点で国や地域を分類・分析する必要があります。レポートはその方法の1つとしてメタバース企業であるAtlas RealityのCEOサミ・カーン(Sami Khan)氏の言葉を取り上げています。
同氏は言語が似ている国同士をグループ化することの重要さを説いており、クリエイティブなプロセスを合理化することで、キャンペーンの規模を拡大しながらユーザーに適切なエクスペリエンスを提供できたとしています。