ソニーが新たな成長ステージに向けた投資を加速し、業績に大きな変化が生じています。
2022年2月にアメリカの独立系ゲーム開発会社Bungieの全株を取得すると発表。この買収に4,140億円を投じる計画です。Bungieは『Marathon』、『Myths』、『Halo』、『Destiny』が代表作として知られ、PC、PlayStation、Xbox向けのゲームを開発してきました。今回の買収はBungieの人気タイトルを、PlayStationに縛り付けてハードの付加価値を高める取り組みのようにも見えますが、ソニーはもっと長期的な視点で解釈しています。
キーワードとなるのが脱ハード依存、メタバース、IPです。
ゲーム事業の利益率はなぜ低下したのか
ソニーのゲーム事業の売上高は全体のおよそ3割を占めており、会社の行く末を占う重要なものです。
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※「投資家情報」より
2022年3月期のゲーム事業の売上高は前期比3.1%増の2兆7,398億円、営業利益は1.1%増の3,461億円でした。営業利益率は2019年3月期から2022年3月期まで12.0~13.0%で推移しています。しかし、2023年3月期は8.3%まで低下する見込みです。
その一方で、売上高は前期比33.6%の大幅増を見込んでいます。予想通りに着地すると、9,200億円ものプラスとなる3兆6,600億円です。
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※「決算説明会資料」より筆者作成
増収要因はPlayStation5の売上増や、ゲーム内課金であるアドオンコンテンツを含む自社制作以外のゲームウェアの販売増加によるもの。減益の主要因がBungie買収に伴う440億円の費用計上です。
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※2022年3月期第3四半期「決算説明資料」より
ソニーは国際財務報告基準であるIFRSを採用しています。そのため、買収に関わるのれんの償却費は発生しません。しかし、長期的に費用として計上されるものが2つあります。1つがBungieの無形資産の償却。これは主にBungieがこれまで投資をしてきたソフトウェアの償却費だと考えられます。
もう1つが従業員株主に対して継続雇用を条件として支払う費用。2年で2/3を計上するとしています。後者は極めて重要度の高いものですが、詳細は後述します。
つまり、Bungieを買収したことでソニーは利益率が数年にわたって低くなる可能性があるのです。それでも大型買収を選んだ要因は3つあると考えられます。1つ目はハードへの依存を抑えること。2つ目はアドオンの市場拡大が旺盛なこと。3つ目は注力領域をゲーム機からIPへと移していることです。