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位置情報共有アプリ「NauNau」の情報漏洩問題に揺れたモバイルファクトリーが、再出発に向けて新たなスタートを切りました。
「NauNau」は2023年10月21日にサービス提供を停止。このアプリを開発したSuishowは位置情報技術に強みを持っており、モバイルファクトリーが2023年5月に子会社化した当初は『駅メモ!』『駅メモ! Our Rails(アワメモ!)』の両タイトルとNauNauとの連携を強化し、ノウハウの相互共有でサービスを拡大する構想を掲げていました。
しかし、情報漏洩問題が大々的に報じられたことで方針を見直し、ブロックチェーン事業からの撤退を決定。『アワメモ!』は搭載を計画していたP2E(Play to Earn)機能「シャボンシステム」の開発を中止しました。そして、『駅メモ!』に経営資源を集中すると明らかにしたのです。
その経営判断を市場は好意的に見ています。決算と方針転換を明らかにした1月30日の決算説明会のモバイルファクトリーの株価終値は703円でしたが、2月5日には10.7%高い778円をつけました。
リリースから1年ほどで減損損失を計上した『アワメモ!』
モバイルファクトリーは2023年12月期の売上高が前期比7.2%増の33億7,000万円、営業利益が同9.3%増の9億4,500万円でした。2024年12月期は売上高を同5.9%増の35億7,000万円、営業利益を同12.1%増の10億6,000万円と予想しています。
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※決算短信より筆者作成
モバイルファクトリーは、2020年12月期に上場以来初の減収となりました。コロナ禍で不要不急の外出を控えるよう求められ、鉄道を使った位置ゲームである『駅メモ!』の利用が制限されたことが背景にあります。
その後、『駅メモ!』は力強く回復に向かい、3期連続の増収となりました。
モバイルファクトリーは『駅メモ!』にNFTの要素をプラスした『アワメモ!』の成長に期待をかけていました。2022年末の時点では、『アワメモ!』の流通取引総額が2025年を目処に『駅メモ!』を上回り、暗号資産である「QYSコイン」の経済圏を拡大。自治体や鉄道会社と「QYSコイン」を利用したコラボレーション展開を行うことまで視野に入れていました。
■当初の計画
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しかし2021年12月期において、すでに『アワメモ!』は当初の計画に見合った収益が得られていませんでした。出足から躓いていたのです。
先行投資という位置づけだったブロックチェーン事業は、当然利益が出ていません。直近においても、四半期で6,000万円前後、1年で2億5,000万円の赤字を出しています。
■モバイルファクトリー事業別営業損益
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※決算説明資料より
モバイルファクトリーは「QYSコイン」のIEOを目指していました。IEOとは暗号資産交換業者が審査を行い、取引所に暗号資産を上場させて資金調達を行う手法です。日本で初めてIEOを実現させた「Palette Token」は、9億円の調達目標に対して申込金額が224億円を突破したことで知られています。
キャラクターの育成要素に活路を見出す
モバイルファクトリーは「QYSコイン」の流動性が高め、『アワメモ!』のゲーム性を拡張しようとしていました。駅にチェックインすることでポイントを獲得。ポイントは「QYSコイン」と交換することができます。「QYSコイン」は上場しているため、理論的には現金化することができます。また、NFTマーケットでゲームに登場するキャラクター「みんこ」の衣装や素材を購入し、オリジナルの「みんこ」を育て、NFTマーケットで売買できるようになるというものでした。
つまり、『アワメモ!』を中心とした経済圏が形成され、ユーザーはゲームのキャラクター「でんこ(みんこ)」を育成するという要素の拡張を楽しむことができます。『駅メモ!』の弱点は駅の陣取りゲームが古参ユーザーによって臨界点を迎えつつあること。それ以外の楽しみ方を提供する必要がありました。
モバイルファクトリーは2023年5月に「NauNau」のSuishowを完全子会社化しました。「NauNau」は位置情報を友人や家族と共有して、何をしているのかを把握するアプリ。『Z世代が選ぶ!!「トレンド寸前!次世代SNS TOP10」』の1位を獲得し、400万ダウンロードを突破するなど、若者の支持を集めていました。
買収の目的は明言していませんが、『駅メモ!』や『アワメモ!』のユーザー数を増加させるねらいがあったでしょう。『駅メモ!』のユーザーは、2014年~2019年にプレイし始めた(5年以上続けている)ユーザーが全体の64.4%を占めています。安定した収益は見込めるものの、新たなユーザーを獲得して収益ポイントを拡大しなければ、会社の成長が望めません。
■『駅メモ!』のユーザーがゲームを開始した年の構成比率
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しかし、「NauNau」の情報漏洩報道をきっかけとして見直しを迫られることとなりました。